2011年12月号


おいしい劇場
Scene 16.

心に悲しい雨が降る。 でも、やまない雨はない。
●日本も家庭も閉所だった。
 曽野綾子さんは、大学4年の時芥川賞候補になって文壇にデビュー、才女時代の到来ともてはやされました。翌年、第3の新人として活躍していた三浦朱門さんと結婚。華やかな話題をマスコミもこぞって祝福したと伝えられています。しかし、
「曽野綾子は30代のはじめ、ウツになった。・・・年譜を見れば、その間、発表された作品が極端に少ないのが分かる。」仕事の他に、「結婚生活、自分と夫の両親、子供、育児。彼女にとって日本も家庭も閉所だった。」(三浦朱門『ウツを文学的に解きほぐす』青崩堂刊)より
 三浦さんは、自分の海外での仕事の度に積極的に曽野さんを日本から連れ出します。まだ外貨が自由に使える時代ではなかったのですが、アメリカ縦断やブラジルのペン大会、ローマ、そして・・・

●あなたもウツかも知れない
 気力がなくなる。真っ暗な穴に落ち込む。眠れない。食欲がない。人生に希望がもてない。悲しみが止まらない。・・・激しい格差と閉塞感で、だれもが生き難い時代です。うつになってあたり前かも知れません。
 ウツの治療はさまざまに試みられています。
 脳の奥深く、悲しみと怖れが生まれる「へんとう体」の活動をコントロールする「DLPFC」と「25時」。そこへ電気信号による刺激を送ると、全部ではないが劇的な変化が起こり暗鬱の人が笑顔を取り戻すそうです。

●言葉の力、食の力、そして献身
 電気よりも強く柔らかくこころに届き、うつを治していくものがあります。それは、言葉と食と思いやりです。
 俳優の竹脇無我さんを、凄絶なうつから生還させたのは、森繁久弥さんと加藤剛さんの手紙でした。(「凄絶な生還」マキノ出版)
 奥さんを亡くして、理由のない罪悪感に落ち込んだ天気予報士の倉嶋厚さんは、お手伝いさんの献身的な気配りと料理で救われました。(「やまない雨はない」文春文庫)
 三浦さんは親子3人でアメリカ・アイオアに長期滞在していたときのことを書いています。
「アパートの台所のデコラ張りの安テーブルの上で曽野は小説を書きはじめた。私は彼女のうつは治ったと思った」。
 雨はやんで、光がさしてきました。

うつにやさしいパスタの豆腐クリーム和え
栄養や健康面から高く評価される「ニップン アマニ油」とアミノ酸を多く含む豆腐とみそをベースに、玉ねぎを入れて豆腐クリームを作りました。オーマイ・スパゲッティ1.5ミリ結束タイプを茹で、アミノ酸を多く含むアボカドも入れ和えてみました。
料理研究家 木澤 智乃


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