おいしい劇場
Scene 7.

幻想空間への時間旅行は銀河鉄道でどうぞ
 ジョバンニ少年は、活字拾いのアルバイトで貰った銀貨でパンと角砂糖を買って、一目算に牛乳屋へ駆け出しました。病気の母に砂糖入りの牛乳をあげようと思ったのです。
 新しい牛乳が届くのを待って、黒い原っぱに寝転んでミルクを流したような天の川を見ていました。すると、「銀河ステーション」と呼ぶ声がして、気がつくと小さな列車に乗っていました。
 宇宙旅行が始まったのです。
 星祭りの夜に川で流されて亡くなった友だちのカンパネルラもいっしょです。
「そのきれいな列車は、天の川の水や三角点の青白い微光の中をどこまでもどこまでも走っていくのでした」。

●最愛の妹の面影を追って
 この美しい未完の物語は、宮沢賢治が28歳のころ、1924年の秋から冬の間に書かれました。(詩人の入沢康夫・天澤退二郎両氏の研究による)
 賢治は1922年11月に最愛の妹トシを亡くし、激しい衝撃を受けます。そして翌年、汽車で青森・旭川・稚内・樺太へと、トシを探す旅に出ます。このときの体験とイメージが「銀河鉄道の夜」に結実した、といわれています。
 銀河は、死者たちを送る道だったのです。

●再生のミルクを抱えて
 ジョバンニは、天上へ去るカンパネルラと別れて、天の川から地上へ戻ってきます。あのブルカニロ博士が、「おまえはもう光の鉄道の中でなしに、ほんとうの世界の火や激しい波の中を大股にまっすぐ歩いていかなければいけない」と諭したのです。
 ジョバンニは、牛乳の瓶を抱えてお母さんのもとへ走り出すのでした。

●雨ニモ負ケズ
「銀河鉄道の夜」に出てくる食べものは、パンと牛乳、砂糖、トマト、チョコレート、そして聖なる果実・林檎です。
 賢治は「食」への関心がとても強く、そしてシンプルです。

  一日ニ玄米五合ト
  味噌ト少シノ野菜ヲタベ

「雨ニモ負ケズ」を1931年11月3日の手帳に書きしるした賢治は、その翌々年、銀河鉄道の帰らぬ客となりました。37歳でした。

銀河鉄道・鷲駅で売っていたかも知れないアップルパイ
NIPPNの日本の小麦、全粒小麦粉、DANTEエキストラバージンオイルとお塩を入れたパイ生地にりんごの甘さを引き出すために少しのお塩を入れて煮たリンゴのコンポートを包み焼き上げました。とてもシンプルでヘルシーな簡単にできるアップルパイは朝食にも ぴったりなスイーツです。


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