2010年5月号


おいしい劇場
Scene 4.

エドアール・マネ「草の上の昼食」(1863年)アルジャントゥイユのセーヌ河畔の水浴を描いた。208X264pの大きい油彩である。オルセー美術館蔵。
「草の上の昼食」がおいしい理由
●裸でランチ
 森の木陰で、紳士と淑女が歓談しています。2人の紳士はひげを生やし、しっかり衣服を整えていますが、女性は裸です。脱ぎ捨てたドレスの上にかごからパンが1個転がり出ていますから、ランチのあとらしいことがわかります。
 だけど、なぜ裸なんでしょうか?

●セザンヌもピカソもルノアールも
 この絵は、エドアール・マネの1863年の作品で、セーヌ河畔の水浴を描いた「草の上の昼食」です。発表当時は大変な不評でスキャンダルにまみれ、サロンにも落選したんだそうです。最初のタイトルは「水浴」。しかし、4年後にモネが同じシチエーションで描いた「草の上の昼食」を知って、同じタイトルに変えました。元祖はこちら、というわけでしょうか。
 7年後の1870年には、セザンヌが、同じシチエーション、同じタイトルで描きました。さらに100年後の1980年ごろ、ピカソも「草の上の昼食」に挑戦しました。しかも、3枚も、です。マネの絵をていねいに模写したスケッチも残っています。

●開放感がおいしい
 マネの絵には、パンの他はチェリーなどの果物が描かれています。モネの絵のメニューは、トリの丸焼きとワイン、パンと果物がわかります。 セザンヌのは判別できません。ピカソは3枚ともたべものらしいものは見あたりません。彼の興味はほとんど裸の女性の方だったようです。
 「草の上の昼食」がなぜおいしいのか、明確に答えを出したのは、ピカソと同じころ、自分でシナリオを書いて映画を作ったJ・ルノアール監督でした。人工授精によって優秀な人間の誕生を提唱する大学教授が、セーヌ河畔のパーティで水浴の田舎娘の魅力に負けて、自然の妊娠を自ら実践する羽目になったという他愛もない喜劇です。自然の風が運ぶ、青葉の香りや太陽の匂いが、人の感覚を開放するよろこびこそ、マネからピカソまで、100年を超えてアーチストたちが表現しようとしたテーマだったのかも知れませんね。
 「草の上の昼食」がおいしいことは、バーベキューの経験のある人なら誰でも認めること。裸ならもっとおいしい。その結果、殿方が野性的になりすぎて、映画の中のセリフ「男には半獣半神の精神が宿っている」ことをうっかり証明などしませんように。

「草の上の昼食」に描いてほしいパニーニ
草の上のランチで野性的になりすぎる殿方の安全のために「ニップンふっくらパン強力小麦粉」に、葉酸たっぷりの「ニップン小麦若葉の青汁」と動脈をいきいきさせる「ニップン小麦はいが 粉末タイプ」を練り込みました。焼き上げたパンに「オーマイ早ゆでカラフルマカロニ」と大豆のコロッケをはさみ「ニップン小麦はいが フレークタイプ]をふりかけました。木澤智乃(料理研究家)


■後記
 あるところで、「草の上の昼食」の版画に出会いました。昼食のテーブルがしつらえられて、ワインやパン、果物らしきものが見えます。作者はセザンヌ。画集にもほとんど載っていない作品だそうです。
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