第1回 東京六本木 国立新美術館+シテ丼「モネとシテ丼」
2007年4月16日発売号
 さあ、散歩でもなく万歩でもない満足の「満歩」に出かけましよう。そして満腹でも飽食でもない満足の「満食」を!
 まず、今年1月にオープンした国立新美術館を訪ねることにします。目的は、始まったばかりの「大回顧展モネ」と「異邦人たちのパリ」展です。
新美術館は、六本木の東京大学生産技術研究所の跡地に建てられた、国立としては5番目の美術館だそうです。元々は、旧陸軍歩兵第三聯隊と近衛歩兵第七聯隊の兵舎でした。その一部は別館として保存されています。設計は都知事選を戦ったあの黒川紀章さんです。
 クロード・モネ(1840-1920)は、光の画家といわれ、日本では特に人気の、印象派を代表する巨匠です。オルセー美術館やボストン美術館から集められました。(7月2日まで)
 「異邦人たちのパリ」は、あこがれのパリへ来たアーチストたちの作品展。藤田嗣治、シャガール、マン・レイの写真などが人気です。(5月7日まで)
 濃密な芸術の鑑賞は、意外に疲れるものです。しかし館内のレストランもカフェも長蛇の列。時間とお金が充分な女性たちの表情にも疲れが目立ちます。たまらず外へ出て見れば、モネの絵のような春の陽光が柔らかく迎えてくれます。左へ行けばオープンしたての六本木ミッドタウン、さらに六本木交差点を右に曲がれば六本木ヒルズですが、混雑の中でケイタイを掲げた女の子にぶつかられるのもストレスがたまる、という方には美術館を出て右に、だらだら坂がお勧めです。通称「星条旗通り」。人通りも信じられないほどまばらで、左側はちょっとシックなワインの店などがつづき、右は金網に囲まれた一帯。カメラを向けると一喝、制止されました。こんなところに在日米軍の施設があったのです。
ぶらぶら満歩で10分、外苑西通りへ出ます。西麻布交差点そばのアマンドの角を左へ入って100メートルほど、小さなビストロを見つけました。磨き込まれた黒光りの床。くすんだ壁には複製ですが、フジタの絵も飾ってあります。セットされたテーブルが10ほど。
 1973年にオープンした「ビストロ・ド・ラ・シテ」。内装やイスも当時のまま。「こんなクラシックな店は、西麻布はもううちだけになってしまいました」(オーナーの関根さん)。
深紅のシートに腰をおろすと、モネの陽光をきわだたせるような、古きパリ・シテ島の奥深い暗さに包み込まれます。
パリにあこがれた画家たちに混じって、パリ生まれのクロード・モネも向こうの席にいるような・・・。

写真大 シテ丼。クシュクシュをイメージして、季節の野菜の煮込みに粟の代わりに使った花山椒入りタイ米がさらりとして美味しい。添えられたスプーンの辛味を混ぜれがカレー丼のようでもある。
写真小左 国立新美術館ロビー。入場券なしで利用できる。
写真小中 星条旗通り。こんな処に在日米軍の施設が。
写真小右 ビストロ・ド・ラ・シテ

FOOD ビストロ・ド・ラ・シテ
東京都港区西麻布4-2-10 tel:03-3406-5475月曜・第2火曜休)シテ丼は、小さなお菓子と珈琲がついて1000円(週末はなし)。ほかにお勧めはシテ風オードブル盛り合わせと若鶏のグリエなどのビストロ・シテ ランチ1500円など グラスワイン300円。
SPOT 国立新美術館
港区六本木 7-22-2 tel:03-5777-8600 (URL:http://www.nact.jp)火曜休館

オリンパス E‐1 ズイコーデジタル 14-54ミリ

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