第261回 【 2019 何を叫ぶか? 】 ムンク展
1月10日号

  明けましておめでとうございます。

 2019年は、どのような年になるのでしょうか。1年の計は正月にあり、というそうですが、今年は除夜の鐘が鳴り止まぬうちに原宿竹下通りでテロまがいの事件、3日夕には熊本で地震、4日の大発会は株価が暴落、と御神酒の気分もすっかり醒めてしまいそうな……。
 かくなる上は覚悟を決めて時代の変化に立ち向かわなければならないわけですが、それにはまず、今年はこれから何が起ころうとしているのか、知っておく必要があります。
 1月はこのあと、国会の間を縫って首相のロシア訪問。歯舞・色丹はどうなるのか?
 ゴーン容疑者や、初場所の稀勢の里のことも気になります。
 2月、辺野古基地に対する沖縄県民投票。
 4月1日、新年号発表。7日、統一地方選挙。
 5月新天皇即位。初体験の10連休をどう過ごすか、悩みます。
 6月末には大阪でG20首脳会議。トランプもプーチンも習近平も来ます。
 7月は参院選挙。衆参同時選挙の噂もありますが? 結果は極めて重大です。   
 9月からはラグビーワールドカップが始まります。すでに外国で50万枚のチケットが売れているそうです。
 そして10月は消費税10%に引き上げ。
 以上は日本国内の予定の極く1部です。北朝鮮、米中貿易、イギリスのEU離脱、台湾帰属問題などがからんで、ひと筋縄ではいかない。さらに地震や地球温暖化の影響か、異常気象による台風、豪雨などの災害が、人間のたてたスケジュールなどいっさいおかまいなしにやってきます。
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 話しは変わりますが、都美術館で開催中の[ムンク展]が人気で、昨年末ですでに50万人が鑑賞したそうです。お目当てはもちろん[叫び]です。展示室は光線によるダメージを防ぐため極端に明かりを落としてあり、暗がりの中で人波に揉まれながら絵が発する[叫び]を聴くことになります。
 オスロのフィヨルドの日没の空を背景に、この人物は何を叫んでいるのか? 人間が抱えている実存的な不安と孤独と絶望を表現している、という解説が一般的です。が、環境つまり資本主義社会がもたらす格差、疎外、閉塞感など耳を聾する強慾な叫びに反応して、両手で耳を塞いでいる絵なのだ、という説もあります。そして、自然からも社会からも彼自身からも孤立しているのである。(同展カタログの解説より)
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 2019年は多難の年のように見えますが、予定は未定に過ぎません。何かが起これば、予定はひっくり返り、崩れた壁の間から明るい光が見えてくるかも知れません。北方四島が返ってきたり、消費税アップが中止になることも! 希望はあります。
 [ムンク展]会場の一隅には、絵の前でポーズをとって叫びの自撮りをするコーナーがあり、人気です。黒柳徹子さんも叫んでみせました。
 いま、みんな、何かを叫びたいのだと思います。
 絵の前でも、どこでも、まず叫んでみましょう!

【ムンク展】東京都美術館(東京・上野公園内)1月20日まで。
観覧料1600円、大学・専門学校生1300円、高校生800円、65才以上1000円。中学生以下無料。
問い合わせtel:03-5777-8066

写真 ムンクの代表作「叫び」は、版画のほかに4点が現存している。初来日の本作は1910年ごろの作品。オスロ市立ムンク美術館所蔵。

オリンパスOM-D E-M1 MaekU M.zuiko Digital 12-100 mm F4

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