第254回 【 [1968] いちご白書をもう一度 】
|
|
左端は秋山勝行・全学連委員長 このあと、4月に逮捕される。
ノーベル賞受賞の川端康成先生と吉永小百合さん。
むしろ変革を遂げたのは〈文化〉かも知れない。カウンターカルチュアの旗手たちが、さまざまな旗を翻した。寺山修司は「天井桟敷」を、唐十郎は「紅テント」を前後して立ち上げた。美輪明宏は、蜷川幸雄の初演出で、主演デビューした。
新宿文化の舞台で、衣裳を担当した川久保玲はコム・デ・ギャルソンを立ち上げ、高田賢三はパリにブティックをオープンした。
今村昌平監督は「人間蒸発」を完成。大島渚監督はカンヌ映画祭に乗り込んだが、ゴダールやトリフォーの殴り込みで中止になった。
10月、川端康成はノーベル賞を受賞。
岡本太郎は大阪万博のシンボル、太陽の塔の制作に入る。
美輪明宏さん
青春とは、理想を追う季節のことだという。とすれば、'68年ごろは、'64年東京オリンピック後の不況が若者たちを直撃した冬の時代を突き破って、半分青い芽がいっせいに吹き出した春の時代だったともいえる。
'68年は、高度成長の端緒となる年でもあった。
春は終わり、人間なら壮年にあたる夏、赤く燃える朱夏の時代が来た。
壮年はやがて老いる。イザナギ景気が陰り始める白秋の終わりに、リーマンショックがきて、時代は暗い冬の時代に移った。
いま、2020年オリンピック前のつかの間の陽差しを浴びているが、オリンピック後には生き難い厳寒の時期がつづくと思わなければならない。
暗い玄冬のあとの、青い春の芽吹き、「いちご白書」の季節が再び巡り来ることを願いながら……。
(写真はいずれも「青春1968」より・彩流社刊3200円+税)
ニコン ニッコール50o 28o
|
|