第253回 【 [1968]置き去りにした青春を探して 】−−再読・五木寛之『デラシネの旗』
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1968年ごろの五木寛之氏(『青春1968』に掲載)
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ドキュメントタッチで書かれた『デラシネの旗』は、五月革命の熱がまだ冷めない10月に、文藝春秋別冊に発表された。もちろん創作であるが、黒井の1部分は当時の五木さん自身かも知れず、実際、同じ時期に、五木さんはパリ・カルチェラタンにいて、美術学校で〈アデュー ドゴール〉のポスター作りを手伝っていた。
おそらく本書の執筆中に、5月革命は急速に終末を迎えていたはずだ。石たたみはアスファルトに変えられ、ドゴールは再選された。日本でも、学生運動は終熄に向かい、やがて赤城山事件、軽井沢山荘事件の悲劇を迎える。ドゴールは翌年引退するが、佐藤首相は再任される。
「デラシネの旗」の凄さは、幻影に過ぎなかった革命の行く末を予言しながら、一種の悲しみの響きで書かれていることだ。50年目の今、再読するべき本だと思う。
『デラシネの旗』(文藝春秋社)初版本のカバー。裏面(左)は美術学校でポスターの印刷を手伝う五木寛之さん。
この写真集は、五木さんの序文にあるように「デラシネたちの墓標」であるが、同時に、僕たちが《置き去りにしていた青春》を探す道しるべかも知れない、と思う。(彩流社刊・3200円+税)
ニコン ニッコール50o F2
オリンパスOM-D E-M1-MaekU M.zuiko Digital 14-42mm F3.5-5.6
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