第249回 【 日はまた昇る 】
1月10日号
  明けましておめでとうございます。

 東京は、穏やかな美しい新年の朝を迎えました。
 日本の南も北も災害の傷がまだ癒えず、北陸では激しく雪が吹きつけているときに、東京だけは、おそらく世界中で東京だけが、日差しも柔らかな正月を過ごすことが出来たのだと思います。しかし、・・・なぜか2018年は、とてつもなく大変な年になるような予感がします。
 今年2018年は、平成30年、明治150年、そして、あの1968年より50年の節目に当たります。歴史の上の偶然とはいえ、節目が多すぎて、ただではすみそうにありません。
 平成と明治はともかく、1968年がなぜ節目の元なのか、若い人のために説明しなければなりません。
 50年前、年明け早々の5日、チェコで社会主義からの民主化運動が起こりました。「プラハの春」です。ベトナムではテト攻撃で米軍が苦境に。日本では29日、東大医学部が無期限ストに入り、学生運動の狼煙があがります。
 2月、成田では空港建設反対派と警官との衝突。3月には農地の代替地の造成工事が開始され、以来、10年後の成田国際空港の開港のその後も、長い闘争の時代がつづくことになります。東大では安田講堂占拠で卒業式が中止。4月、アメリカ・コロンビア大学では映画「いちご白書」の元になった学生ストライキ。パリでは5月革命。カンヌでは映画祭にゴダールなどが殴り込みをかけ、中止になった。6月、東京では学生が神田の街を占拠(神田カルチェラタン)。
 8月20日、ソ連軍が突然チェコに侵入、プラハの春は一挙に冬へ逆戻りした。10月、川端康成、ノーベル文学賞受賞に沸くなか、学生が新宿駅を占拠した「新宿騒乱事件」。アメリカではジョンソン大統領がベトナム北爆の全面停止を発表。アメリカは負けを認めたのです。11月、沖縄の嘉手納基地でB52が爆発し、1週間後には佐藤栄作首相が3選される。東大では翌年の入学試験の中止を決めて、激動を翌年に繰り越しました。
 一方、経済、技術革新も旺盛でした。霞が関ビルなど高層ビル時代の始まりや、通話は出来なかったが呼び出しポケベルの発売、アポロ8号が月の有人周回飛行に成功、初の心臓移植などと並行して、全学連の過激な運動が進行したのです。
 そしていま、我々の現在が1968年の前夜に似ているのではないかと気になるのです。沖縄の辺野古の反対闘争が、成田闘争の歴史を繰り返すのではないか、アメリカがベトナムの過ちを北朝鮮かイスラエルでもう一度繰り返すのではないか、ついに若者たちが行動を起こすのではないか、と。
 それは決して悪い初夢ではなく、どうにもならない閉塞感を破って、新しい時代を招くことにつながる、そんな予感がするのです。

写真 日はまた昇る。日本・千葉・九十九里浜にて。

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