第247回 【 「1968年」無数の問いの噴出の時代」 】
11月10日号
 「1968年」無数の問いの噴出の時代」展が、国立歴史民俗博物館で開催されています。
 無数の問いとは何でしょうか。
 誰が何を、だれに問うのか、問いには答えがあったのか?
 第1の問いは、ベトナム戦争です。1965年に始まったアメリカ軍による北ベトナム爆撃、いわゆる北爆は世界中に衝撃を与え、反戦運動が起こりました。日本では、「ベトナムに平和を!市民連合」通称ベ平連が、市民参加の運動として全国に広がりました。アメリカの若者は病み、脱走兵が相次ぎました。なぜ、戦争なのか?
 第2の問いは、三里塚闘争です。成田国際空港の建設をめぐる、地元農民らの、「我らが開拓した土地をなぜ?」という問いです。
 第3の問いは、水俣病闘争。高度成長の陰で、公害という犠牲は避けられないのか?
 そして最大の問いは、大学から。産業界の要請に屈した高等教育への疑問が、全共闘運動という問いとなりました。フランスでは5月革命と呼ばれる学生運動、労働者ゼネストに発展しました。
 これら疑問のマグマが、無数の問いとなっていっせいに噴出したのが、1968年でした。
 問われたのは旧秩序の体制、既得権益を代表する政府でしたが、果たして答えはあったのか?
 あれほど反対され厳しく問われた〈戦争〉への答えは〈平和〉である筈ですが、戦争で儲ける人がいる限り、ベトナムはイラクに代わり、シリアへ、そしていま北朝鮮に移り替わるだけのようです。
 ある問いは潰され、排除され、多くはうやむやに葬られて、50年後の現在まで、何一つ答えられないまま、宿題となっていることを痛感するばかりです。
 
 
 
  
【[1968年]−無数の問いの噴出の時代−展】 国立歴史民俗博物館 (千葉県佐倉市)
12月10日(日)まで 月曜休館(月曜が休日の場合は翌日)
入場料;一般830円 高校・大学生450円 中・小学生無料、(土曜は高校生無料) 問い合わせ;03-5777-8600

写真上から1 戦争への問い「ベトナムに平和を! 市民連合」
写真2 相次ぐ脱走兵に、偽装パスポートで援助した。
写真3 学生からの問い「全学連闘争」。右翼や警察からの激しい暴力にヘルメットは欠かせなかった、といわれる。
写真4 農民の問い「三里塚闘争」

オリンパスOM-D E-M1-MaekU  M.zuiko Digital 14-42mm F3.5-5.6
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