第235回 11月10日号

【青春の一閃のきらめき 高倉健三回忌】
  高倉健さんが亡くなってちょうど2年。11月10日は3回忌を迎える。
 1960年代の「網走番外地」の純粋で美しい健さん。つづく「昭和残侠伝」シリーズの鮮烈な一閃の輝きに、自分の青春のきらめきを重ねて思い出される方も多いだろう。
 60〜70年、安保闘争の渦中、革命を叫ぶ若者たちは義理人情の任侠映画を強く支持した。警官に追われた学生は「唐獅子牡丹」深夜上映中の映画館に逃げ込んだ。
 健さんが長ドスを手に殴り込みを決心するとき、客席からは「異議無し!」の声が飛んだ。
 沸騰の時代が終わり、閉塞感が満ち始めるころ、健さんは東映を離れて、極道者からいわゆる〈いい人〉に変身する。もちろん役柄のことだが、「幸せの黄色いハンカチ」や「鉄道員(ぽっぽや)」など、名作に主演して、日本人の心を伝えようとする。
 19日からはじまる「追悼特別展・高倉健」(東京ステーションギャラリー)では、映画俳優高倉健の全貌を回顧して、その偉大な生涯を顕彰しようとしている。
 205本の出演映画すべてから名場面を抜粋して編集した映像も上映される。205本のうちには、フイルムの劣化で現在見ることが出来ないものも多いが、デジタル処理をして全編2時間余の総集編となったという。
 また、健さんが大事にしていたお宝、台本や小道具なども展示される。1956年、初主演作品の「電光空手打ち」のぼろぼろになった台本、尾忠則のポスターなどだ。
 混雑が予想されるために、入場は日時指定の完全予約制である。

【高倉健 追悼特別展】
東京ステーションギャラリー (東京駅丸の内北口改札前)
11月19日から2017年1月15日まで(休館は毎月曜(ただし1月2日、9日は開館)、12月29日〜1月1日、1月10日)
観覧料 一般1300円、高校・大学生1100円、中学生以下無料。
日時指定の完全予約制:電話での予約0570-063-050、ローソンチケット、チケットぴあなど。問い合わせ03-5777-8600。



【絵筆一閃 ほとばしる情熱】
  健さんとほぼ同じ時代、ヨーロッパで活躍した画家、ピエール・アレシンスキーの絵画展が渋谷で開かれている。ベルギー生まれ、50年代にパリに移り、55年には妻ミッキーとともに来日、書道に触れて、「日本の書」というドキュメントフイルムを作った。
 映画は今回の会場で上映され、アレシンスキーのほとばしるように走る筆の力、その秘密が明かされる。今年89才、なお勢いは衰えない。

【ピエール・アレシンスキー展】
Bunkamuraザ・ミュージアム (渋谷東急本店横) 12月8日まで 観覧料 一般1400円、高校・大学生1000円、小中学生700円。

写真 上 ミュージアムショップで売っている「高倉健2017カレンダー」1800円
写真 下 アレシンスキー「魔法に掛けられた火山」1974年

オリンパスEP-F ズイコーデジタル12-42ミリ F2.8
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