第230回 【優雅の極みvsゲスの極み 源氏物語を京ことばで語る山下智子さん】
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「いずれの御時にか 女御更衣あまたさぶらいたまいける中に・・・」
源氏物語の冒頭の1節を国語の時間に暗記させられた方も多いだろう。
与謝野晶子や谷崎潤一郎や名だたる文豪たちが、工夫を凝らしてそれぞれの時代の現代語訳に取り組んだ。
最近の林望訳では「さて、もう昔のこと、あれはどの帝の御代であったか・・・。宮中には女後とか更衣とかいう位の妃が・・・」と、だいぶ分かりやすい。
これを京ことばで語るとどうなるか。中井和子・京ことば源氏物語では、「どの天子さんの御代のことでござりましたやろか、女御や更衣が大勢待っといやしたなかに・・・・」急に、しなやかで鮮やかなリアルティを帯びてくる。
もともと源氏物語は読むものではなく、女房(高位の女官)が姫たちに読んで聴かせたものだという。千年前の女たちも、不倫の話は大好きだったらしい。平成の私たちも、女房の読む物語を間近にきいてみたい。
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山下智子さんは京都の生まれ。仲代達矢の無名塾の出身で、舞台やTVで10年に一人の逸材といわれ、スターへの階段を上り始めたとき、突然、消えた。病気だったらしいが、才媛はいつまでも隠されてはいない。
彼女が源氏物語五十四帖を京ことばで語りはじめて、もう十年になる。
「物語の底に流れる〈もののあわれ〉をくみ取っていただけることを願います」。自ら「今女房」を名乗る山下智子さんのことばだ。
【隔月連続公演・京ことば源氏物語・三十七帖「横笛」】6月18日(土)、19日(日) 午後3時より、明大前キッド・アイラック・アートホールにて
2500円(予約2000円)tel:03−3322−5564
写真 苦悶の表情も美しく、女房語り・山下智子さん。
オリンパスOM-D EM-1 ズイコーデジタル12-60ミリ
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