第218回 我慢しなくていいパスタ 人気急上昇の大豆食品
6月10日号
 会場は早々と盛り上がっているのに、片隅にうずくまって携帯を握りしめ、パソコンをにらんでいる男がいた。少々取り乱しているようにも見えた。声をかけるのもためらわれた。
 この夜は、大豆のパスタ「soico」を中心とした有料試食会のパーティだ。ワイン、ビール、料理の小皿、そして今宵の主役「ソイ・スパゲティ」がそれぞれ500円。料理は中野にアトリエを構える三田健義シェフである。
 スライドが映写され、(株)ビーンズの社長・長谷川真吾氏を紹介のアナウンスがあり、パソコンの前の男が立ち上がった。皆は飲みもののグラスを手にスクリーン前に集まった。
 あとで分かったことだが、この日この時間、1部の店で「soico」が売り切れ、欠品になったのである。女性雑誌に紹介される、という予告がwebに流れたためだというが、キャンペーン中の商品が欠品とは、あってはならないことだ。逆にこの商品に対する人気、関心の高さは驚くべきことだ。
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 長谷川さんは挨拶をはじめた。
「私は、名古屋の名城大学を卒業して、花王へ就職しまして、2日目に辞めようと思いました」
 会場がシーンとなった。 「結局3年後に、佐藤食品工業へ転職しました。佐藤食品は食品業界では粉末酒の製造メーカーとして有名です。…この技術は日本では佐藤にしか出来ないものです…食品業界で、佐藤はなくてはならない技術を持っていて、ほとんどの日本の大手食品会社とおつきあいがございます。開発事業の営業を8年以上、ほぼ毎週、全国各地に出張しておりました」 「実はこの間に結婚しまして、子供が生まれたときが8年目で、これを機に、独立する決心をしました。かねてから考えていた、アレルギーフリーの食品を自分でやってみようと思ったわけです」
 アレルギーフリーと聞いて、会場がどよめいた。
 現代の暮らしは、花粉症から放射能まで、アレルギーに満ちていて、からだは悲鳴を上げている。特に食品は、自分たちが食べているものがどんなもので出来ているか、みな、日ごろから不安を感じているのだ。筆者の場合、例を挙げればコンビニで買うおむすび。背中のラベルをはみ出すくらいに書き込まれた添加物の多さにまずアレルギーを抱いてしまう。これはジョークではない。
「麦のグルテンをはじめ豆以外の26のアレルギーフリーを完遂するためには、独立した製造のラインが必要ですが、幸い、よく理解していただいて応援してくれる企業がありました」
 会場にほっとした空気が流れた。
「北海道の大豆を使いました。小麦のパスタはほぼ100%糖分=炭水化物で出来ていますが、ソイスパゲッティはイソフラボンと食物繊維+蛋白質です」
 拍手が起きた。この響きは協力企業にも届いてほしいと思った。
 三田シェフからひと言。「大豆のスパゲティは、水分を吸収するのでソースが問題です。ちなみに今夕は、ひよこ豆のポタージュ系のソースを作ってみました」
 なるほど、せっかくのアレルギーフリーもソースによっては元も子もなくなってしまう。そして、何より、おいしくなければダメである。豊富なレシピの開発を早急にお願いしたいものだ。


写真(上) 試食会で、スクリーンの前で語る長谷川真吾さん。(青山のニューロ東京にて)
写真(下) 大豆のパスタsoico 細麺と平面がある。(各340円)。
ほかに大豆&チアシードのパンケーキ(200g=810円、400g=1,350円) オイシックス、東急デパート、阪急デパート、インターネットで発売中。

オリンパスOM-D EM-1 M.ズイコーデジタル12−50 ミリ


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