第211回 モネとルノワールとセザンヌとゴッホ 【夢見るフランス絵画展】と【チューリッヒ美術館展】
11月10日号
  芸術の秋――。
 今年は例年よりも豪華版の美術展がそろったような気がします。景気が良いせい? のはずはないが、会場へ入ってぐるりと一わたり見渡せば、ひと目数十億という桁違いの作品がずらりと勢揃い。絵の良さは理解できなくても、高価なものらしいとだけは分かる、というものです。

【夢見るフランス絵画展】
 渋谷のbunkamurザ・ミュージアムでは、まずセザンヌの「大きな松と赤い大地」。故郷のプロヴァンスの風景を描いた晩年の作品です。
 副題の《印象派からエコール・ド・パリへ》のとうり、シスレー、モネ、ゴッホから、世界中の芸術家がパリへ集まって黄金時代を作ったエコール・ド・パリの時代、ルオー、ユトリロ、藤田嗣治、シャガールなどが魅力的です。が、なんといっても一番人気はルノワールでしょう。「宝石をつけたガブリエル」の前は、いつも人だかりが解けません。
 夢見るようにあこがれたパリの芸術。これらすべては一人の日本人コレクターの持ちものだそうです。誰なのかは匿名希望とかで教えて貰えませんでした。

【チューリッヒ美術館展】
 六本木まで足を伸ばし、新国立美術館へ。こちらのサブタイトルは《印象派からシュルレアリスムまで》。同じ印象派でもずいぶん印象が違います。ルソー、ムンクからフォーヴィスム、キュビズム、シュールレアリズムのダリまでを網羅しています。スイスの作家ジャコメッティも。
 目玉はモネのタテ2メートルヨコ6メートルの大作「睡蓮の池、夕暮れ」のようです。日本人のモネ好き、特に睡蓮好きはなぜなのか、不思議です。むしろ、ゴッホとピカソの前で圧倒されて動けなくなった自分を発見したのでしたが。
 チューリッヒは小さいながら金融で栄えた都市だそうです。美術館の20万点の収蔵品の3分の2が寄贈によるもので、「睡蓮」も個人の寄贈です。

【赤瀬川源平の芸術言論展】
 若いころモネにあこがれて画家を目指したという赤瀬川源平さんの集大成「芸術言論展」が始まった。ネオ・ダダ時代から裁判史に残る「千円札裁判」、トマソンと路上観察等々、いつも不思議な面白がり屋で、芥川賞作家でもありました。オープニングの2日前、10月26日に亡くなりました。合掌。






写真(大) 長さ6メートルのモネ「睡蓮の池、夕暮れ」とサポーターの黒柳さん
写真(中上) ゴッホ「サント=マリーの白い小屋」
写真(中中) ルノアール「宝石をつけたガブリエル」
写真(中下) セザンヌ「大きな松と赤い大地」
写真(小) ネオ・ダダ時代の赤瀬川原平さん

ニコン ニッコール50ミリ
オリンパスOM-D E-M5 M.ズイコーデジタル12−50 ミリ


【夢見るフランス絵画展】 Bunkamuraザ・ミュージアム12月14日まで 休館日なし 問い合わせ03-5777-8600
入館料:一般1400円、大学・高校生1000円、中学・小学生700円

【チューリッヒ美術館展】 国立新美術館 12月15日まで 火曜休館  問い合わせ03-5777-8600
観覧料:一般1600円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料

【赤瀬川源平の芸術言論展】 千葉市美術館 12月23日まで 休館日 12月1日 問い合わせ043-221-2311
観覧料:一般1000円、大学生800円、小・中・高校生 無料
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