第183回 「点光線から面照明へ、さらに無影照明へ」 新・写真作法C
5月25日号
●レンブラント光線
 光は万能の仕事士ですが、同時に魔術師でもあります。雲間からあふれ出て、歓喜の音楽を奏でるような光。画家の名をとってレンブラント光線と名付けられていますが、「薄明光線」とも、「天使のはしご」とも、さらに宮沢賢治は「光のパイプオルガン」といいました。
 筆者がイスラエルの北のガリラヤ地方を訪れたとき、ちょうど目の前に広がる湖の上で、視界いっぱいの感動的な光の供宴が行われていました。
 ガリラヤ湖周辺は、エルサレムを追われたイエスが布教活動の拠点としたところです。あとで使徒となる聖ペテロなどは、この湖の漁師でした。有名な「山上の垂訓」の丘や、「受胎告知」のナザレの教会など、キリスト教徒の聖地です。イエスは嵐を鎮め、湖を歩いて渡る奇蹟を行ったという伝説もあります。

●フェルメール照明
 17世紀のオランダの画家フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」をもとに書かれた小説が、2007年に映画化されました。映画では、アトリエは2階にあり、フェルメールは広い窓を左側にとって画架を立てています。あくまでも映画の舞台装置なのですが、絵を見ると実際その通りだったと思われます。モデルとなった少女の左から、窓いっぱいの柔らかな光が少女を浮き彫りにしています。この光こそ、フェルメールの最大の特徴です。真眼塾では、この照明をフェルメール照明と呼ぶことにしました。

●点光線から、面照明へ
 光は最初、点でした。ろうそくやガス灯、白熱電球はいずれも点光源です。教会の高い窓から落ちてくる一筋の光、が象徴的です。 しかし、蛍光灯の時代になって、光は線になりました。線を連ねることで面照明が得られました。さらに上下左右に蛍光灯をめぐらせて、立体照明が可能になりました。影のない照明は、被写体を物体として捉える時に有効です。

●影のない光の中で。透過光の時代
 駅や街を飾る様々なポスター。見れば桑田佳祐さんや福山雅治さんは、逆光か半逆光で撮られています。反対に若いサウンドグループの写真はすっぽりと光に包まれて、影がありません。
 病気や挫折を超えてきた桑田さんたちは、逆光の影の中で内面的・精神的なアピールをしている。が、若い少年少女たちは、ものと同様な物体として表現されているようにも思えるのです。

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新・写真作法は「石黒健治x真眼塾」のテキストをもとに不定期に掲載予定です。次回は「空間@ 情景で撮らず、空間で撮ろう」です。

ライカM4 ズミルックス 35ミリ
オリンパス OM-D E-M5 M.ズイコーデジタル 12~50ミリ



●お知らせ【石黒健治x真眼塾写真展 2013私たちのNOW】
オリンパスギャラリー東京 神田小川町1-3-1 地下鉄都営新宿線小川町A6出口 丸ノ内線淡路町A4出口
6月6日(木)〜12日(水) 入場無料
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