第179回 写真の困った!? 3つ 新・写真作法B 光は万能の作業士
3月25日号
●写真の3大宿命
@「写真」というものは、ない。
 フランスの哲学者ロラン・バルトが言うように、写真はすべて、何々の写真、母の写真であったり恋人の写真であったり、料理の写真だったり・・・。つまり被写体がなければ「写真」になれません。
A第2の困ったは、光がなければ写らないことです。
 被写体があっても残念ながら、光がなければ写りません。(暗視カメラなど、熱に反応する方法もありますが、写真と言えるかどうか。)
B世界は立体、写真は平面。さあ、どうする?
 すべての被写体は3次元の立体です。平らな壁も細かい起伏があります。それらすべてを平面の紙の上で表現しなければなりません。

●光は万能の仕事士
 3つの困った! を救ってくれるのは「光」です。一筋の光さえあれば、被写体は姿を現し、紙の上で丸や四角の立体を魔術のように表現してくれます。どのようにやるのか?
 お目にかけましょう。なあんだ、といわないでください。光は照明と名を変えて、陰を巧みに使ってくれるのです。



 人物写真で見てみましょう。
 写真(上)は正面からの光、順光です。この照明では、人に限らず、被写体を肯定的に捉えることができます。前向きで、積極的、肉体的、アメリカ的な照明とも言えます。
 写真(中)は、横からの光、側光です。写真は質感を明暗でしか表現できませんから、質感を表すときに欠かせない照明です。この光の中では年齢を重ねた深さと重みのある顔が出現します。つまり、しわが目立つわけで、美容にうるさい女性には禁物ですね。
 写真(下)は逆光。影を生かして表現する方法です。精神的、懐古的、懐疑的、思索的です。物思いに沈む表情などを表現する時にふさわしい照明です。アメリカ的な順光に比べてヨーロッパ的と言えるかも知れません。(モデルはすべて同じ女性です。照明によって印象が違うことが分かっていただけたでしょうか。)
 ケイタイをはじめ、全世界で年間「2兆5千億回のカシャ」と写真が撮られ、メールを行き交い、SNSで発信されています。少しでも写真が上手に楽しく撮れますように!

 新・写真作法は「石黒健治・真眼塾」のテキストをもとに不定期に掲載予定です。次回は「レンブラント光線とフェルメール光線」および「線照明から面照明へ」です。

オリンパス OM-D E-M5 M.ズイコーデジタル 12~50ミリ

close
mail ishiguro kenji