第169回 ぱっと見たときの感激をカシャ 新・写真作法Aフォト・イノチェンティ
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一方、画家が制作に応用したカメラ・オブキュラスから出発した写真は、肖像画など画家の持ち分をおびやかしながら、絵画の芸術性に追いつくことに必死でした。マン・レイのように、生涯、アートにコンプレックスを持っていたカメラマンもいます。
写真は、幸か不幸か、事件や行事などをはじめとする記録性、災害や戦争などの報道性、免許証などの実証性という、絵画にはない実用性を持っています。このことがかえって写真をアートから遠ざける結果になったのかも知れません。
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いま写真は、フォト・イノチェンティの流れと、1枚の写真に社会批判や文明批評を盛り込んだ高度の批評性、さらに人間の本質に迫る芸術性に向かう流れとが2頭立てで進んでいると思います。そして、お互いに優越感とコンプレックスを持ち合って進化しているのではないかと思われます。仲のいい兄妹のように。
アメリカの批評家スーザン・ソンタグは「すべての芸術は写真にあこがれている」といいました。写真には未来があります。
写真:「石黒健治真眼塾」で、目をつぶって開けて、初めて見る1秒間の光景を楽しんだ。
オリンパス OM-D E-M5 ズイコーデジタル 12~50ミリ
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