第167回 2兆5千億回のカシャ 新・写真作法@
|
|
○○
「カシャ」は、時間を停止させることだ、とティスロンは書きます。「・・・あらゆることがかくも早く過ぎ去っていく。しかも楽しい瞬間こそ!・・・」。カシャは、過ぎ去っていく瞬間を〈凍結させる〉ためではない。むしろ逆なのだ、と。そして、「観光客がバスから降りて〈写真撮影〉をするや、ろくに写真に撮った風景を眺めもしないですぐに次の場所へと出発する。・・・」誰でも経験のあることですが、それは、カメラという箱に、記憶をとりあえず投げ込んでおく行為だというのです。もちろん、あとで箱から取り出してゆっくり見るためです。
1枚の写真から千の記憶がよみがえります。「写真を撮ることは、必ずしも常に、死体に防腐処理を施すことに似ているわけではない。将来花が開くことを期待しながら種を蒔くことにも似ているのである。」さらに、
「私たちが撮った写真をあるがままに受け入れること、それは世界に付き添う行為となる。そのとき、写真を撮ることは、まるで花々を摘み集めることに似たものになる。そうした行為を私たちは、世界の美しさに賛辞を捧げるという幸福のためにだけ行うのである。」 ティスロンの世界は美しい。しかし、21世紀の写真に待っているのはいくつもの困難だ。それは、E・ウェストンの言葉にあるように、「レンズの眼は肉眼より良くものを見る」からかも知れません。
○○
「新・写真作法」は、7月にスタートしたワークショップ「真眼塾」のテキストをもとに書いています。今後、不定期でご紹介します。
写真:「石黒健治真眼塾」には、現役のカメラマン、イラストレーター、webデザイナー、編集者なども集まってくれた。みな写真が好きで、写真の力を信じて、写真をもういちど見直して見ようという人たちだ。
オリンパス OM-D E-M5 ズイコーデジタル 12~50ミリ
|
|