第166回 インド人もびっくりのインドと日本 日印国交60周年
9月10日号
   『インド人もびっくり』は、もともとSBカレーのコマーシャルのセリフだったらしいけれど、いかにも言い得て妙!? と、思わずニヤリとしてしまう。カレーの達人のインド人が驚くほどのおいしさということの前に、インドでは日常的にとんでもないことが起きているので、人々はちょっとやそっとでは驚かない、との先入観があるからだろう。
 今年、日本とインドは国交60周年を迎える。同時に、インド独立65周年である。(共和制になるのはさらに3年後だが)。
 1760年ごろからインドはイギリスの植民地にされた。ちょうどそのころ生まれたガンジーは、弁護士として赴任した南アフリカで激しい人種差別にあう。以来、差別撤廃とインドの独立を目指して、独特な運動を展開した。『非暴力の不服従』である。官憲から殴られても、血が流れても、じっと耐えて報復しない、しかし引き下がらない。これにはイギリスも驚いた。捉えて獄につないだ。すると要求が通るまで断食を始めた。イギリスはさらに驚き怖れた。東洋系の文化を持つわれわれには多少の理解はできても、アングロサクソンには、全く考えの及ばないできごとだった。ガンジーはいう。「暴力によって得られた勝利は敗北に等しい。一瞬でしかないのだから」と。
 第1次大戦後、イギリスはローラット法を施行する。礼状なしの逮捕、裁判なしの投獄、上告禁止の法である。不服従運動のガンジーは逮捕され6年の刑で投獄された。
 ガンジーは獄中で断食に入り、全国民に断食を呼びかける。國のあらゆる機能は止まった。つまりゼネストである。イギリスは仰天した。
 1930年3月、ガンジーはインド総督へ1通の手紙を出す。 「・・・イギリス人の農場主の給料は毎月2万1千ルピー(約158万5千円)、毎日7百ルピーです。インド人の平均1日の収入は、2アンナ(約9円)。インド人の平均の5千倍以上をとっている・・・」
 そして、3月12日、太さ3センチ、長さ約150センチの竹の杖をつき、79人の門下生を連れて、ボンベイの海岸への行進を始める。「塩の行進」である。1日2回集会を開きながら、約40キロを24日かけて行くのである。
 イギリスは政府専売の塩に税金をかけていた。暑いインドで労働者にとって必要な塩にまで税をかけている。ならば塩は自分たちで作ろう、というのだ。
 これにはイギリスだけでなく世界中がびっくり仰天、驚いた。ガンジーは、当然逮捕された。が、運動は止まらなかった。
 1947年、インドは英王国インド連邦として独立。しかし、50年に共和制に移行して真の独立を果たした祖国を見ることなく、48年1月30日、兇弾に倒れた。
 ガンジーは、偉大な魂を意味するマハートマーを冠して呼ばれ、国民の間ではいまもバプー(父)の愛称で慕われている。
 さて、昨今の日本のお偉いさま方の行状はどうか。とんでないことに慣れっこのインド人も驚きあきれているにちがいない。



★ナマステ・インディア2012 9月22日(土)23日(日)代々木公園 入場無料
第2会場=たばこと塩の博物館(入館料100円)国交60年の今年は、様々なイベントが組まれている。

写真(大) 野外ステージでは、インド舞踊をはじめ様々なパフォーマンスが披露される。(2011年撮影)
写真(小) 普段ちょっと味わえないインド本場の料理の出店が並ぶ。(2011年撮影)

オリンパス E-P1 ズイコーデジタル 12〜42ミリ


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