第161回 リアル・フェイスブックへの招待 ITからICTへ A さらにICCTへ
6月25日号
  企業の人事部は、求職者のフェイスブックの友人関係や書き込みを見て予備調査をするという。原発反対〈いいね!〉などは、チェックを免れない。しかし応募者もさるもの、先回りして用心怠りない。原発反対集会に参加した、なんて絶対に書かない。帰りに食べたラーメンの写真など、どうでもいい情報だけを投稿する。こうして難関突破で採用した新人が、断りもなく3ヶ月で辞めてしまう例が多い。理由はミスマッチだという。
「ICTでは残念ながら人間の五感のうちの視覚と聴覚、つまり映像と音だけしか使えません。これで相手がどんな人か判断するなんて無理だと思います。求人、求職だけでなく、誰にとっても不幸なことです」というのは、(株)フブキ社長の角川英治さんだ。そして五感をフル動員するICCTを提唱する。
 角川と書いて、カクガワと読む。1969年生れ。広島市出身。明治大学政経学部卒。音楽を、ヘビーメタルからプログレ、ジャズ&フュージョン、ソウル、レゲエ、ニューウェイブ、ブラジル、民族音楽、エレクトロ、アルゼンチンロックと徹底的に聴き、それはいまも続く。自分でもギターを弾く。  卒業後、不動産会社に就職して営業マンとなった。「卒業したばかりの若造から3,4千万のマンションを買う人を見て、不動産購入時の不安や悩みを第3者から聞きたいだろうと思い、悩み相談のサイトを開設しました」。コンピュータとのつきあいが、このように始まった。1999年、29歳でホームページの企画制作会社フブキを設立した。「当時はウェブデザイナー1人で企業のホームページをつくれる時代でした。現在は、様々な技術やPRのノウハウ、大げさに言うとブランディングや経営哲学まで範疇にいれないとホームページが作れない時代になってきています。お客さんへ提供したい価値やサービスがやればやるほど広がっているといいますか。」
「いま、多くの企業がサイトのリニューアルに熱心に取り組んでいますが、事業や経営の見直し、経営者の頭の整理のための良いきっかけになるからです」。
 ICCTの2番目のCはカフェのCだ。カフェ・コミニケーション、またの名を呑みニケーション。これでは一昔前と同じでは?
「そうかも知れません。フェイスブックで足りないものを補うリアル・フェイスブックのつもりですから。僕の会社、小さな会社ですがノミニケーションで来てくれた社員はみな優秀で辞めません(笑)」
「人と人が出会う空間はどうしても必要だと考えて、5年前に吉祥寺にニューロ・カフェを作りました」ニューロは張り巡らした神経のことだ。そして今年、「外苑前に東京ニューロカフェを作りました。10坪あまりの空間ですが、バーカウンターがあり、音響設備と震動緩和の床を整えて、踊ったり歌ったり、あるときは仕事の打ち合わせ、打ち上げ、すべてのリアル・コミニケーションのための配慮をしました。東京の他にも、ロンドン、ニューヨーク、マドリッド、ベルリン、パリなどにも作りたいです」。
 震災後、8歳の長男とともに北海道旭川市へ移住した。夫人は、「社会にも愛にも敏感な人だから」。現在は東京へ単身赴任の形となっている。「移ってから急に赤ちゃんができた」と友達から冷やかされる。実はこの記事が出るころ、第2子が誕生するという。
 夢と希望が見えてきた気がする。

写真 「ニューロ・カフェはリアル・フェイスブックです」(株)フブキ社長・角川英治さん。(外苑前ニューロカフェで)

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