第160回 フェイスブック やってますか? ITからICTへ @
6月10日号
  ハーバード大学生のマーク・ザッカーバーグは18才。恋人にふられた腹いせに、大学のコンピュータにハッキングして手に入れた女子学生の顔写真を並べて格付けするサイト「フェイスマッシュ」を立ち上げた。サイトは大人気で、たった2時間で2万2千回のアクセスを記録して、大学のコンピュータをダウンさせてしまった。マークは査問委員会にかけられ、半年間の保護観察処分となり、全女子学生の嫌われ者となる。その2年後、「ザ・フェイスブック」を全米の学生向けにサービス開始。2006年には一般にも開放された。・・・これは2010年に公開された映画「ソーシャルネットワーク」のストーリーですが、ノンフィクションの原作と同時進行で撮影されていて、ほぼ事実の再現を描いているようです。
 映画の公開から3ヶ月後、チュニジュアで起きたジャスミン革命で、フェイスブックは民衆側の情報連絡に使われて重大な役割を果たした。続くエジプト革命は別名「フェイスブック革命」とも名付けられた。たが、同時に政府軍に情報が筒抜けになり、デモの中心人物の割り出しに使われた。
 いまでは全世界で9億人、日本でも1千万人が利用しているといわれる。今年5月には、米ナスダック市場で新株を公開上場し、資金調達額は1兆2千億円。企業価値を示す時価総額は、1040億ドルといわれる。マークは28才。
 たった6年間のことである。なぜこれほど急速に普及したのか? IT関係に詳しい(株)フブキ社長の角川英治さんに聞いた。角川さんは、いままで、ミクシィやツイッターなどSNS(ソーシャルネットワークサービス)には参加していなかったが、はじめてフェイスブックに登録した。なぜ?
「一言でいえば、IT(インフォメーション・テクノロジー)からICT(インフォメーション・アンド・コミニケーション・テクノロジー)に変わってきた、と感じたからです。いままでのソーシャルメディアでは、個人では情報を制御できない面がありました。もっとさかのぼって言えば、TVなどのマスメディアの〈メディア催眠〉にかける手法は、もう誰も信用しなくなって久しい。フェイスブックは、そういう情報の海の中から噴火してできた新しい島で、ここではコミニケーションが1対1でできるようになっている。自動販売機から手売りに変わってきたといったらいいでしょうか」
「コンピュータを操作すれば、知らないことを知らない人に聞くことができる。反対に知らない人に知らせることができる。しかし、フェイスブックを使えば、友達から友達ができて、いままでなら10年後に遭えるかどうかという、自分にとって重要な人に、1ヶ月で会える。・・・僕がフェイスブックに期待するのはこのことにつきます。その分、人生が長く豊かになるんです(笑)」
 たしかにフェイスブックは、時代に必要なメディアとして登場してきたと思う。中東では革命の武器にもなった。が、日本ではどうか。学生たちの就職に関して、企業側が思想調査の道具に使っているとも聞く。角川さんもそのことは先刻承知。「リアル・フエィスブック」またの名「カフェ・コミニケーション」について次号で。

写真 フェイスブックを見る(株)フブキ社長・角川英治さん

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