第157回 「モナ・リザ」謎の微笑の謎 モナ・リザは高脂血症で妊娠中だった?
4月10日号
  世界で1番有名な絵といえば、ほとんどの人が「モナ・リザ」を思い浮かべるでしょう。77cmX53cm、新聞の見開きほどの肖像画。モナ・リザはなぜ微笑むのか? 何を微笑むのか? 世界中の美術史家、画家、文学者などや王様までもがこの謎に挑んできたが、すべて徒労に終わっています。
 謎の微笑の前で気が狂った青年や、ルーブルでモナリザの絵はがきを買い占めてひんしゅくを買った日本人もいました。1911年にルーブルから盗まれたときは、ピカソも取り調べを受けたそうです。
 モナ・リザが高脂血症だったということは、実は内科医の間ではよく知られた話のようです。謎の微笑をたたえた目頭に描かれた小さな粒は、黄色腫つまり脂肪のかたまりに違いなく、昔から診断の目安となっているといいます。コレステロールの多い食事をとっていれば肥満も当然、肖像から推定して、体型は163cm74kgだったろう、という研究者もいます。
 それだけではない。モナ・リザは妊娠中だったという説も有力です。ホルモンの関係で皮下脂肪が沈着して肌が艶やかになり、特に4ヶ月ころは心身共に安定して幸せのピークを迎える。女性が一生で一番美しい時期であり、微笑の謎もさもありなん、というのです。
 このことは、モデルは誰かというモナ・リザ最大の謎を解く鍵でもあります。描かれた時期とモデルの妊娠の可能性から、フィレンツエのF・ジョコンダの2度目の妻リザとマントヴァ侯妃イザベラ・デステが最終候補のようです。
 渋谷で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想」展では、モナ・リザの絵がずらりと並んで展示されて度肝を抜かれるます。よく見ると、微笑にそれぞれ差があり、コケティシュなものや睨んでいるようなものもある。右向きのもある。しかし、いずれも目頭の黄色腫はありません。ルーブルのものが唯一のモナ・リザなら、全部偽物? 謎は深まるばかりです。
 これらはすべて「美の理想」を追求するダ・ヴィンチの弟子や強い影響を受けた作家たちの作品であり、ダ・ヴィンチと共作だったり、後で加筆した作品もある。近くダ・ヴィンチの真筆として研究発表される作品も並んでいて、認められれば、もう簡単にはお目にかかれなくなるでしょう。
 会場の次のコーナーには、裸のモナ・リザが並んでいて、さらに驚かされます。  ダ・ヴィンチから560年。「モナ・リザ」は永久不滅の謎の微笑を送り続けています。それは、私たち誰もが心の底に抱いている永遠の女性像に向かっての親愛のサインかも知れませんね。


写真(上) 豊満な裸の「モナ・リザ」が並んで驚かされる
写真(下) 初公開のレオナルド・ダ・ヴィンチの真筆「ほつれ髪の女」版

オリンパスE−5 ズイコーデジタル 12−60ミリ

●「レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想」展
6月10日まで Bunkamuraザ・ミュージアム渋谷区道玄坂2−24−2(4月23日のみ休館)10時〜19時(土日は19時)
入場料一般¥1500 大学高校生\1000 小中学生¥700問い合わせ03-5777-8600
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