第144回 ヨコハマトリエンナーレ2011はおいしいA
「食べず嫌いの人も食べてみて」  総合ディレクター逢坂恵理子さんインタビュー

9月25日号
  美術好きで一家言の持ち主の先輩が夏休みにイタリアへ旅行するので、「ヴェネチャ・ビエンナーレが楽しみですね」と言ったところ、「美術は評価の定まったものがいい。明日にもゴミになるかも知れない作品はちょっとね」とにべもなかった。100年の歴史を持つアートのオリンピックのヴェネチャも形無しだった。ヨコハマはどうか。
 逢坂さんは昨年10月、総合ディレクターを引き受けたときに《みる、そだてる、つなげる》を基本方針に掲げた。「みる、は自分でじかに観る醍醐味です。そだてる、は若い作家と同時に鑑賞者も育てること。そしてつなげる、は現代芸術と古典や過去の作品をつなげることをめざしたのです」逢坂さんは横浜美術館長でもある。温度管理のできる美術館の機能を活用して財産である収蔵作品をつなげることができる。
「観て楽しめる古典も、妖怪もいます(笑)。現代美術を食わず嫌いな人、食べに来てください。きっとおいしいですよ」。では、どんなにおいしいか、アート・グルメのツアーに出かけよう。時代を切り開き、魂を揺さぶる作品を見つけて、先輩を見返したいものだ。
 先号で観た横浜美術館から、巡回バスで日本郵船海岸通倉庫へ、さらに「新・港村」へ。ここは特別提携プログラムである。港の船を見ながらカフェで一休みしたら、次は黄金町へ。かつて売春と麻薬売買の巣窟だった黄金町は大岡川畔も整備されてきれいになった。現在アートによる街作りの途上のようだ。

■第4回ヨコハマトリエンナーレ2011 会場・横浜美術館・日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)・その他周辺地域 会場間の無料バス有り 11月6日まで

 
写真(上) tpt(日本)「セレブレーション」新・港村ホール(新・港村=別料金)
写真(中左)ウィルフレド・プリエド(キューバ)作「ONE」2800万個のイミテーションダイアの中に、たった一粒の本物のダイヤが潜んでいるというのだが・・・。(横浜美術館)
写真(中右)志村信裕(日本)作「lace」黄金町バザール2011(竜宮美術旅館=別料金)
写真(下左)イエッペ・ハイン(デンマーク)作「スモーキングベンチ」座ると一斉に霧が吹き出して一瞬に幻想世界へ。(日本郵船海岸通倉庫)
写真(下右)デワール&ジッケル(イギリス&フランス)作「無題」20トンもの陶土を使って現地制作した。(日本郵船海岸通倉庫)

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