第127回 南京グラフィティ 2 観光編
12月25日号
   1年を象徴する今年の漢字は『暑』が選ばれた。確かに暑かった。第2位は『中』。いろいろ問題のあった中国を指すという。
 今年8月、暑さの史上最高を更新しているころ、中国へ取材旅行に出かけた。行き先は南京。
 空港からの送迎バスの中で、ツアーガイドが明るい声で言った。「ようこそ、中国3大ボイラーの南京へ! 」因みに中国3大火炉とは南京、重慶、武漢の3都市だそうだ。「いま、ここは38度。日本は39度、上海は40度。万博で行列で並んでいる人、可哀そう!」してやったりの表情だ。ここ南京よりひどいところはいくらでもあると言いたかったのだろう。そして、ちょっと声を落として、「南京へ来る日本人は余りいない。来てもほとんど日帰りです」。
 南京は日本人にとって、余り居心地のいいところとはいえない。理由はもちろん、「大虐殺記念館」の存在だ。最大の有名観光スポットとされているが、南京にはもっと見るべきところがあるはずだ。中国4大古都の1つであり、国民政府の首都でもあったのだから。 まずは揚子江と長江大橋を見よう。下が鉄道の2階構造で、1968年に完成。中国独力で作った中国人誇りの橋で、観光客の記念撮影が引きも切らない。背景は茶灰色の広大な流れだ。この河で、毛沢東が泳いで見せて健康をアピールしたこともあったが、本人かどうか、偽物説も根強い。
 南京博物院では、日中戦争時に北京-南京−重慶−南京と避難を繰り返した「南遷文物」を見ることが出来る。
 中山陵や明孝陵など、土地の広さに驚いたら、南京城の正門、中華門へ。城壁というより、強固な城そのもので、よくもまあ、こんなところを日本軍は攻めたもんだ、とあきれてしまう。
 土地っ子に人気は夫子廟のようだ。孔子の教えが現代中国で生きているとは思えないが、年寄りの地蔵通りと若者の原宿と浅草仲店とがいっしょになったような大きな賑わいがある。
 市の中心街には高級デパートもユニクロも並んでいるが、庶民はスーパーでお買い物だ。この日は1元セールをやっていた。日本円で約70円均一。100円ショップ中国版か。
 夜の街へ出よう。有名老舗の料理店にあきたら、下町の居酒屋チエーン店へどうぞ。若者がいっぱい。味は四川料理に近く、メニューは豊富で、おいしくて安い。
 ついでながら、コーヒーショップでビールは20元、コーヒーが30元。ペットボトルのお茶はスーパーで2元、街の売店で4−5元、虐殺記念館では15元だった。


写真(大) 揚子江と長江大橋は人気スポットだ
写真(上左) 長江をバックに記念撮影   (上右) 南京城の正門・中華門
写真(中) 夫子廟は若いカップルがいっぱいだ
写真(下左) スーパーは1元大売り出し   (下右) 居酒屋チェーン

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