第98回 「アニメの殿堂」と「ワッハ上方」
9月25日号
   「アニメの殿堂」がついに中止だそうです。「国立メディア芸術総合センター」の構想は残るのかどうか、「新たに建物は建てない」(川端達夫文科相)らしい。建築業界は残念でしょうが。
 予算117億を使ってアニメ映画を作ったら何本出来るでしょうか!長短合わせて100本近く作れそうです。世界中で上映され、うち何本かがヒットすれば殿堂の1つや2つ、税金なしで建つというものです。
 そこで思い出すのは、大阪の「大阪府立上方演芸資料館」です。昨年2月就任した橋下知事が、予算見直しのヤリ玉にあげた通称「ワッハ上方」はどうなっているのでしょうか、機会があって訪ねてみました。
 地下鉄難波駅を出て、大阪有数の繁華街千日前通りを5分。アーケードの切れたところに、なんばグランド花月劇場があります。1年中、朝から晩まで入れ替えなしで、笑って過ごせる「笑いの殿堂」です。吉本興業の総本山でもあります。その真向かいのジュンク堂書店を入って左手のエレベーターで4階へ。「ワッハ上方」の展示室です。
 まず、殿堂ギャラリー。「殿堂入り」は、落語、漫才などで活躍した上方芸人を毎年3人ずつ選ぶ。因みに最初の殿堂入りは初代桂春団治だそうです。その他の展示物は、ひと気も少なく、マネキン人形が寒々しい。
 併設の、というより、こちらが本来の目的だと思うのですが、「演芸ライブラリー」は、関西のTV、ラジオを中心とした演芸の資料約4000点が無料で視聴出来る、アーカイブスとして機能しています。
 「ワッハ上方」は実は7階まであって、307席のワッハホール、レッスンルームなどがそろっている。年間の経費は、吉本興業への賃貸料・管理費2億8千万円、運営会社へ1億2千万円など、計4億3千万円。収入は年間5千万円。利用者は約6万人という。横山ノック知事時代の1996年に開設以来、100億円がつぎ込まれた。府議会は、今年7月、4分の1の経費ですむ通天閣への移転を決め、吉本側は抗議をしているという。
 不況になって、赤字だ、予算削減だといえば、真っ先に犠牲になるのが、文化芸術関係の予算です。お金も大事ですが、笑いはお金を産む「大阪のエネルギー」でもあります。要はお金を何に使うか、だと思います。
 アニメの殿堂中止に関して、川端文科相は「番組1本にスポンサーは数千万円払うが、現場の1番下で請け負う人たちには数百万円しか渡らない。生活できず、若い人材がやめていく現状があることを承知している」といったそうです。(毎日新聞より)
 この世界の末席にいる一人として、いつも残念な思いをしていることは、「もう少し日数がほしい」、「ロケハンをあと少し」、「もう少し人手がほしい」ことです。もう少し予算を現場へ!そうすれば、少しはいい作品が出来て、もっと儲かるかも知れないじゃありませんか。

写真上 カウンターに座って芸能のタイトルを注文すれば、モニターで賞味することが出来る。入場料は大人400円、高・大学生250円、小・中学生150円。
写真下左 千日前は雨でも賑わっている。「なんばグランド花月」は左奥、「ワッハ上方」は右奥に。
写真下右 演芸ライブラリー ここだけの利用は無料。

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