第96回 秘湯グラフィティ 泥湯の夏
8月25日号
   秋田・西馬音内盆踊りの取材をかねて、秘湯・泥湯温泉へ行って来ました。旅程を1日増やして、何年ぶりかの夏休みを決行したわけです。そのご報告。
 8月16日、日曜日の朝、高速道路1000円を利用して出発。この日はお盆休みのUターン最後の日、反対車線が気の毒なくらいの渋滞ですが、下りは快適です。が秋田までは長い。ETCは、政権が替わって不要になったら燃えないゴミで出していいのかなあ、全国では凄い量で、トラック何十台分ぐらいかな、などと馬鹿々々しいことを考えながらの運転です。東北道古川ICで北羽前街道を、さらに鳴子から羽後街道を北上。秋ノ宮温泉郷を過ぎたあたりで、曲がりくねった山道へ入る。途中、日本三大地獄といわれる川原毛地獄を見て、約8時間、ようやく泥湯・奥山旅館へ着きました。
 車を降りると、わっと強い匂いに包まれる。硫化水素の匂いです。旅館の横、裏、向う一帯に水蒸気が噴出し、湯気の中から車が現れる。いま、地獄の真っただ中にいることが分かります。2005年の冬には、雪洞に落ちた一家4人が、ガスを吸い込んで亡くなった事件もあったそうです。
「内湯は朝と夕は時間差ですが、あとは混浴です。別棟に天狗の湯、その先に大野天風呂。男女別ですが一部混浴です」
 説明を受けるが、どうも良く分からない。どうやら、脱衣所は別れているが浴槽は1つ、というより、どの風呂にもご自由に、と言うことらしい。
 実は、混浴で困るのは男の方なのです。万一出くわしたとして、目のやり場に困る。痴漢の目だと思われるのもしゃくだ。
 しかし、現実はおおらかで、大野天風呂の男湯の方に、親子連れが入っていたり、湯気の向こうから、「いま空いているからこっちへ来てご覧」などという声が聞こえてきます。
 大野天風呂の乳白に濁った湯に体を沈めると、地球の鼓動が伝わってくる気がします。日本人は温泉が好き。好きでよかったなあ、と思う泥湯でした。

 秋田県湯沢市高松字泥湯、3軒の旅館がある。秋田湯沢駅からバスで60分、1日3往復、冬期11月−4月は不通。自家用車なら4WD車で。奥山旅館(tel:0183-79-3021)の場合、1泊2食付き9600円から。

写真上 泥湯の豪快な大露天風呂。源泉は新湯。
写真中左 旅館のすぐそばの地獄。道路がぼろぼろになるので、鉄板を敷いてある。
写真中右 このドアを開ければ、大露天風呂。
写真下左 泥湯の旅館村。地獄の中でひっそりと、泥湯の歴史を守っている。
写真下左 泥湯までの途中で。元硫黄鉱山の跡・川原毛地獄は日本三大地獄といわれる
オリンパス E−P1  ズイコーデジタル 14-42ミリ

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