第94回 2回目の世界旅行B スペイン
7月25日号
   サッカーの中村俊輔選手は、今年、スコットランドのセルティックから、スペイン1部リーグのエスパニョールへ移籍した。報道によると、子供の学校の問題もあって横浜マリノスへ帰ってくると思われていたが、本人のスペインサッカーへのあこがれが強く、移籍に決まったという。17月11日の新聞各紙は、バルセロナ空港には300人のサポーターが出迎えて、「中村がついにやってきた」と叫んだ、と伝えた。健康チェックのあと、新しい本拠地コルネジャーを視察し、バルセロナの住まいとなるアパートにも訪れたと言う。
 スペインのサッカー熱は半端でなく、文字どおり世界一だ。あのブラジル代表のカカ、ポルトガル代表のクリスチャーノ・ロナウド、2人合わせて約220億円を投じたというからあきれてしまう。もちろん収入も昨シーズン490億円で、世界一。Jリーグの稼ぎ頭、浦和の約6倍だという。
 バルセロナはご存じのように、ガウディの建築が世界遺産に登録されている。100年かかっても完成するかどうかというサグラダファミリア教会、グエル公園、カサ・ミラなどのアパートなどをご覧になった方も多いはず。アパートの外観は異様な感じだが、たいへん住み心地が良いそうである。この建物の空間には、退屈な日常からは想像できない、清新なアートの空気が流れているらしいのだ。中村選手に、ぜひガウディのアパートに住んで、ファンタジック・ゴールを決めてほしいものだ、と思った次第。
 2回目の世界旅行3回目のスペイン編は、やはりスペイン1部リーグのマラガ県のロンダをご紹介するのですが、その前に、ガウディの世界へ、道草を食ってしまいました。
 スペインという國は、どこかおかしい、非日常的なところがあります。ベラスケスやゴヤ、ピカソやダリを産んだ國です。破天荒なドン・キホーテは、日本の野次さん喜多さんもびっくりです。
 ロンダは幻想的な街です。アンダルシア、マラガ県の山奥、荒れた山地を延々とたどると、海抜739メートルの断崖絶壁の上に、突如、人口3万6千の街が現れます。
 フランスの作家メリメが、小説「カルメン」の舞台として、ここロンダの山地を使ったのは、さすがと思います。セビリアのたばこ工場で働らくジプシー娘のカルメンと衛兵のドン・ホセの恋物語。恋物語というより、激しく燃えるが、すぐに心変わりする女性に翻弄された男の物語です。ドンは、カルメンに心を奪われ、婚約者を捨て、悪事を働き、上官を殺して死刑になり、ロンダに逃げ込みます。そして闘牛士に心を移したカルメンを匕首を持って追い、ついに刺し殺す。・・・・
 カルメンの名は、スペインでは女性の代名詞。読者の紳士方、女性には気を引き締めてご旅行を。

写真(上) スペイン アンダルシアのロンダは、海抜739メートルの岩壁の上にある。左手前のヌエボ橋の裏に、渓谷を見下ろすカフェがある。
写真(下左)ガウディによるバルセロナ市内のアパート
写真(下右)バルセロナ ガウディによる建築中の教会 サグラダファミリア
ハッセルブラッド500C プラナー80ミリ、 ニコンF2 ニッコール50ミリ12ミリ

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