第79回 テロとストレスと青汁と
11月25日号
 このごろ道路が空いていて、どこへ行くにも車はすいすい、時間より早く着く。渋滞のイライラもなく気分も極上といいたいところですが、世界的な不況がこんな形で実感させられるのかと思うと、気持ち悪さに変わってしまいます。
 こうなったのはアメリカン・グローバリゼーションの市場原理主義とか金融至上経済とやらが破綻した結果だといわれても、一度も恩恵に恵まれないばかりか、穀物やガソリンの高騰でひどい目にあったわれわれとしては、さらに不景気の寒風なんてまっぴらご免。冗談じゃありませんよね。
 青汁について書こうと決めたのは、道路が空いてきたぐらいじゃ解消されないストレスが胃袋に加える攻撃を何とかしなければと思ったからです。というと聞こえがいいが、実はきわめて個人的な、仕事の締め切りと徹夜の連鎖、不規則な食事、飲み過ぎ。従って胃袋の不調。かって経験した胃潰瘍の恐怖という事情もありました。
ちょうどそのときでした。「マスコミに報復も」という新聞記事を読んだのは。政府の「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の座長の経済界の某長老が、懇談会の席上でテレビの年金報道などについて『厚労省たたきは異常な話。マスコミに報復してやろうか(と思う)。スポンサーを降りるとか』などと発言した。(毎日新聞11月12日朝刊)というのです。
このとき、いやな予感のようなものがありました。そして、(これはマスコミへの1種のテロではないのか)と思いました。かつて「アウシュヴィッツにガス室はなかった」という記事で廃刊に追い込まれた雑誌「マルコポーロ」のことが記憶にあったのです。
17日、さいたま市で山口さん夫妻が殺害され、翌18日、中野で吉原さんの夫人が襲われた。2人とも元厚労省事務次官で、年金のプロ中のプロだったという。
〈年金たたき〉をした異常な?テレビは、今度は、行政へのテロか内部の犯行か、公憤か私怨かと推理ゲームに忙しい。なんであれ、年金への不信、不満と不安、加えて天下りへの怒りが日本じゅうにたまりに溜まって満タンの状態だったことは確かでしょう。
 このところ子供殺し親殺しが相次ぎ、理不尽な誰でも良かった殺人にエスカレートして底知れない怖さを感じます。秋葉原事件の犯人が1部で英雄視されているとのことですが、今度の犯人が義賊扱いされることになったら、それこそ胃袋はいくつ会っても足りません。
さて、青汁です。銀座1丁目のクラシックな小さなビルの1階の青汁スタンド。「遠藤青汁友の会」の看板が掛かっています。その名の通り、青汁は倉敷中央病院長の遠藤仁郎博士が創案されたのだそうです。
罰ゲームで青汁を飲ませたり、「うーん、まずい!」というコマーシャルが評判になったりで覚悟をしていましたが、飲んでみて、抵抗なくむしろ甘い、あと口がさっぱりすることに驚きました。おいしくするために何か加えているのかと聞くと、倉敷の清浄菜園で栽培したケール100%だけ。夏は少し苦いが冬は甘味が出ておいしいんですよ、と店長の田邊理司さん。青汁スタンドは1954年の創業、銀座にでてから23年になるそうです。話しているうちにも、背広ネクタイのサラリーマンが3人連れで入ってきて、ぐいっと飲んで一杯250円を払ってさっと帰っていく。回数券の客も引きを切らず、ペットボトルを持参の主婦らしい女性は、家で待っている人がいるのでしょうか。
ストレスは万病の元だといいます。青汁を飲んで、せめて健康だけは自衛しましょう。

写真
遠藤青汁グリーンライフ(本社岡山県倉敷市)
銀座青汁スタンドは中央区銀座1丁目6−7 問い合わせは03-3535-2046
店長の田邊理司さんが手にしているのはケールの葉。

E−510 ズイコーレジタル 14−54ミリ

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