第77回 喝采は止まらない 55周年を迎えた劇団四季
10月25日号
 劇団四季創立55周年の記念公演「ソング&ダンス55ステップス」の幕が開くと、ミュージカル『アプローズ』のヒットナンバー『ようこそ劇場へ』の曲にのって、俳優たちが、誇らかに語るのです。「きっとトリコになるさ、覚悟はいいかい」。
 華やかな舞台の裏で、喝采だけを糧に生きていく女優を描いた映画「イヴの総て」のミュージカル版を演じることは、四季の俳優たちにとっても青春そのものだったのでしょう。
「劇団四季は、慶応高校の英語教師で劇作家の加藤道夫先生の元に集まった、演劇を志す学生など十名で1953年に結成されました。」(劇団代表・浅利慶太「創立五十五周年に寄せて」より)。まだ日本が敗戦後の荒廃から抜けきれなかったころです。観客の数が俳優の数より少なかったことも度々だったそうです。
55年後、劇団四季は全国に9つの専用劇場をもち、観客は年間300万人。3000公演を1200人のメンバーが作っている。日本の演劇界でも特別な活動振りといえるでしょう。ミュージカルだけでなく、普通の芝居も自由劇場を中心に常時上演さています。「やっとストレートプレイも出来るようになりました」と劇団のメンバーが語ったのが印象的でした。
さて、記念公演の「55ステップス」です。劇団がこれまで上演してきたミュージカルの名曲をずらりと並べて、新しくアレンジしたものだそうです。『メモリー』(キャッツ)や『ジーザス・クライスト・スーパースター』など、筆者でも知っている曲が次から次へ、目を見張る仕掛けやパフォーマンスを挟んで、客席に感動の渦を作っていく。どんな仕掛けが用意されているか、構成・演出・振付の加藤敬二さんは、奇術師の両親の元で育ったといいますから、お楽しみです。加藤さん自身も踊っています。
四季の舞台は、せりふや歌の詩がはっきり聞き取れて、観客に良く伝わることが嬉しい。歌も踊りも良く訓練されていることは筆者にも分かります。しかし、特に踊りに関しては専門外なので、舞踊家の方にいっしょに見ていただきました。「初期の『キャッツ』(19  初演)のころは、ニューヨークのブロードウエイとの差は歴然で、日本人にはミュージカルは無理だと思ったものですが、見違えるほど見応えがあります。堪能しました」とのことでした。ついでに、「レパートリーにあるはずの『ア・コーラスライン』が入ってなくて残念」と。ブロードウエイのオーディションを題材に、青春の夢と挫折を描いた『ア・コーラスライン』のラストの曲は、何度聞いても背筋に電気が走ったものでした。
四季では、観劇料を値下げして、最高でも1万円以下に設定したそうです。もしミュージカル未体験の方なら、チャンスかも知れません。

写真 「劇団四季」創立55周年記念の「55 Steps] のステージより、浜松町「四季劇場・秋」 にて
 お問い合わせは03−5776−6730

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