第75回 日本山人参の話
9月25日号
 日本山人参の話しをしようと思います。
 初めに断っておかなければならないのは、「こんぶのフコイダイン」とか「深海鮫のエキス」とか、いわゆる健康食品の危うさを知った上で読んでいただきたいことです。
「蟹の甲ら」のチラシや「スッポン亀のなんたら」のメール便だのが毎日のようにポストに入っているのは、こちらがそういう年齢になったからでしょう。
 いずれも癌などの病気に効くという体験談入りの宣伝を展開しています。いくつかの体験談はほんとのことかも知れないし、奇蹟だって信じないわけではないけれど、だれにでも効くというものではないことも事実です。
もうひとつの問題は価格です。はっきり言って高すぎる。病気の恐怖で溺れそうな、藁でも掴みたい境遇の人を相手に、不安の足元を見ているとしか思えない。癌でなくなった田原総一朗氏夫人の節子さんは、「病気になる前にはバカにしていても、いざとなったら手が出てしまうもの。効くかどうか分からなくても、精神的に少しは助けになるかも知れないけど」といっていました。
日本山人参を製造・販売しているアピカ・コーポレーションの斎田圭子社長を三軒茶屋の事務所に訪ねました。出されたお茶は「山人参茶」です。苦味と渋味の混じった独特のエグみがあります。朝鮮人参茶を思い出しました。
「違います。コーライ人参はウコギ科ですが、日本山人参はイヌトウキというセリ科の植物です。わたしは17年前、29才の時に癌が見つかりました。子宮癌と大腸癌です。母を15才の時、父を20才の時、いずれも癌で亡くしているので、家系的なものと諦めていました。私の痩せた姿を見て父の友人が「これを煎じて飲め」と汚いチップをくれました。山人参でした。飲むうちに食欲が出て、トイレも楽になった。それから17年、ごらんのように元気です」
さらに、「主人は医薬関係の会社にいました。血糖値が高かったのですが、山人参のようなものをてんから信じない人だったので、こっそり毎日の料理に入れていました。山人参は魚の臭みを消したり、調味料としても使えますから。その結果、血糖値は平常まで下がりました」
日本山人参は、どこで栽培しているのか。「九州と茨城県ですが、詳しくは言えません。盗難に遭うので。もともと殿様の秘薬として神の草と言われていたのですが、最近まで絶滅したと思われていました。10年かけて育てました」
 斎田さんはいま各地のレストランと連携して、「不老フーズ」を提唱している。
癌や糖尿に効くかどうか。霊芝や、サルの腰掛けはどうなんだろう。古くは丸山ワクチンも 治験薬と呼ばれるにとどまった。現代医学でさえ、確実に有効な手段を持っているとは言えない。
たった一つ筆者がお薦めできるのは、山人参茶で割った焼酎。乙な味がします。

写真 山人参を手に、斎田圭子社長((株)アピカ・コーポレーション)
 問い合わせは03-3412-5988

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