第71回 世界遺産登録をめざす長崎五島列島の海たち 夏休み旅行のご案内
7月25日号
 夏休みの旅行の計画はお済みでしょうか。迷っておいでの方にお勧めしたいのが、長崎五島の旅です。
 今年5月に旅したときの体験をお話ししようと思います。旅のきっかけは、五島市の奈留島に建設中の「笠松有宏記念美術館」を訪ねることでした。(美術館は7月5日開館しました。)
笠松画伯が生まれ育った奈留島は、その名のように美しい島です。廃校になった小学校を改装利用して、郷土の生んだ芸術家の作品を常時展示するとともに、元校庭には焼き物の登り窯を造り、全国から多くのアーチストを呼んで、島興しに役立てようというものです。新美術館のとなりには緑豊かな公園、その先には旅行客のためのコッテージ群と、設備も環境も揃っている。近くには奈留教会があって、日曜にはミサに訪れる島びとであふれる。
現在、五島を含む「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は、世界遺産暫定一覧表に登録されています。このあと登録までにはいくつものハードルがあり、見送られた平泉の例もありますが、「激しい弾圧と250年の潜伏、そして奇跡の復活という世界に例を見ないキリスト教布教の歴史」(パンフレットより)が対象ですから、大いに期待がもてます。
2つほど心配があります。1つは過疎の問題です。五島市の人口は、ピーク時(昭和33年)9万2千人でしたが、今年3月には4万4千人になってしまいました。奈留島では昨年転出や死亡などで50名が減り、生まれた赤ちゃんは5名でした。このままでは、廃墟の世界遺産になってしまいます。島のまわりを道路で要塞のように固めてしまったので、森の栄養が海に流れこまない。だから海藻が育たない。海藻を食べるアワビやサザエがいなくなり、漁業がさびれ、若者の仕事がなくなった、ということです。
 もう1つの心配は、奈留島には海がないことです。正確には浜辺がないんです。道路要塞のおかげで、子供たちが来ても遊べるビーチがない。道路を壊して海を戻すために道路予算を使って欲しいものです。
 しかしご心配なく。福江島には、水質世界一という美しい浜がいくつもあります。奈留島からは2-30分の距離です。観光と社会勉強の旅でした。

オリンパス E‐3 ズイコーレジタル12‐60ミリ

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