第48回 北の国から 東川写真の町と旭山動物園
7月25日号
北海道の「写真の町」で有名な東川町へ行ってきました。この町の市民文化ギャラリーで写真展を開くことになったので、展示の飾り付けに行ったのです。
東川町は北海道のほぼ中央、旭川市から車で約15分、町の東部は大雪山国立公園の区域にあり、大雪山連峰の最高峰・旭岳(2290m)も町に属している。また旭岳温泉や天人峡温泉もある、大きな自然に恵まれた、人口7700人(2007年2月)の町です。 この町が突然「写真の町」を宣言したのは、1985年6月、東川創立90周年のことでした。宣言文は、『「自然」と「人」、「人」と「文化」、「人」と「人」それぞれの出会い』その感動を、与える写真。(中略)『心のこもった”写真写りの良い町”の創造をめざします』というものです。そして、東川写真賞を制定し、毎年夏の1ヶ月をかけて「フォト・フェスタ」を開催することになったのです。
 22年前のことです。町おこしの企画としても、「写真の町」とは世界でもおそらく例のない試みでしょう。しかし正直なところ、いきなり写真の町と言われても、東京から遠く離れたところへ行く人が果たしているだろうか、と疑うものが多かったのも事実でした。一時は、ご多分に漏れず1部の写真関係者の食いものにされている傾向もあったようですが、最近はイベントの1つ「高校写真甲子園」に全国から260校以上の参加があるなど、北の国の夏はますますにぎやかになっているようです。
その東川へ行くのは初めてでした。(ネットでは2002年に「デジタルエロチスム」と題して講演をしたことになっていますが)、松岡町長はじめ、特別対策室長の山森氏、ギャラリー館長の市川氏を中心に実に熱心で丁寧な仕事ぶりに感動しているうちに展示が終わり、翌日、帰りの便を待つ間に旭山動物園へ案内されました。
 うわさの超人気の動物園ですが、動物に驚く前に、観光バスの多さに驚いてしまいました。
旭山は動物園としては面積の小さい方だそうですが、それにしても、動物園の4倍の広さの駐車場が埋め尽くされて遠くのバスはかすんで見えます。全国からの見学者。修学旅行。旅行代理店主宰のツアーには必ず組み込まれている。平成18年には入場者は300万人を越えました。そのおかげで旭川市周辺のホテル旅館はほぼ満員、航空便も満席状態が続いているといいます。
 実はこの動物園は、平成6年にはゴリラのゴンタなどが死に、途中休園に追い込まれました。北海道拓殖銀行が破綻した前年の平成8年には入場者が最低の26万人に落ち込んだそうです。
そんなときに、赤字続きの動物園に対し、再出発の提案を出した現園長がえらい。動物たちがそれぞれ本来の姿で行動するとき、1番美しく生命力にあふれている。それを見せようという提案です。しかし、それよりも、もっと凄い人がいる。と案内の山森室長は言うのでした。閉鎖必至の動物園に予算を付けた当時の市長が凄い、と。
いよいよ夏本番です。北の国から、暑中お見舞い申し上げます。
 

写真上 旭山動物園 北極熊館 ガラス越しの水槽に餌を投げ入れると、水に潜るようすが見られる。
写真下 写真の町・東川 緑の中の市民文化ギャラリー

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