第45回 日本の笑いが変わる? 劇団ヨーロッパ企画
6月10日号
芸能界は、お笑いブームが続いているらしい、というより、お笑い芸人ブームのようです。
藤原紀香と「結婚させてもらった」陣内さんを筆頭に、お笑いばかりがなぜモテるのか、女性の心理は永遠に不可解ですね。
紀香−陣内の披露宴のTVは、関西地区では40%、関東でも27・4%の視聴率を記録したそうですから、ますます訳が分からなくなります。
 一方で、同じ吉本タレントでも、大物の不調が伝えられています。読売ウイクリーのコラム、ワイドシャッター「吉本スキャンダルの裏」によれば、TBS系の「明石家さんちゃんねる」、テレ朝系の「美味紳助(おいしんすけ)」も視聴率1桁から脱却出来ず、ナイナイも藤井隆もダウンタウンも大苦戦だそうです。理由はいろいろあるでしょうが、TV局の演出のせいもあって、ドタバタ下品な笑いに皆が飽きてきたのでしょうか。
と思っているとき、「ヨーロッパ企画」砂組公演「苦悩のピラミッダー」を見る機会がありました。
 下北沢駅前劇場の舞台に明かりが入ると、古代のエジプトのセットで、登場人物はエジプト時代の服装をしていますが、何気ない日常的な会話が京都風の柔らかいトーンで始まります。新劇のようにうたいあげず、歌舞伎のようにミエを切らず、TVのトークショーを意識したかと思うナチュラルさです。
落ち目の政府が、人気取りと景気浮上をもくろんでピラミッドを建設する話ですが、財政難のためスポンサーをつけることになり、サンダル会社の全面協力をとりつけた。条件はピラミッドのてっぺんに巨大なサンダルを飾ること。これには安藤忠雄似の有名建築家も困り果てる。というと、いかにも皮肉を効かせた告発劇のようですが、そうでもない。
話が進むうちに、いつの間にか笑っている自分に気づきます。TV的でありながら、あばずれギトギトから遠くはなれ、程良く品があって、しかし可笑しい。笑いながら、これは、ゲラゲラでもなくクスクスでもない、苦笑でもなく嘲笑でもない、ナンなんだろうとまじめに考えてしまいました。
 脚本・演出の上田誠さんは、現在27才。同志社大学工学部知識工学科でコンピュータのプログラミングを学んでいたが、1998年演劇サークル「同志社小劇場」内で、ユニットを組み、活動を始めてもう9年になります。「演劇の方に走ってしまったので、2003年に中退しました。京都を拠点に、自然な手触り感のある演劇を目指して」いるという。
ピラミッド建設は、東京のオリンピック招致を意味しているのでしょうか?「この台本を書いたのは三年前」という返事です。建築家は安藤忠雄氏がモデルですね。と聞くとニヤッとしました。劇団員は現在20人。宝塚を意識して、星組・雪組・砂組の3つで活動している。「東京は笑わない」と上田さんは言いますが、雪組の「冬のユリゲラー」(ザ・スズナリ劇場)も笑いに包まれていました。6月20日からの星組の「衛星都市へのサウダージ」が楽しみです。

写真 雪組公演「冬のユリゲラー」の舞台の上で。作・演出の上田誠さん。(ザ・スズナリ劇場にて)。星組公演「衛星都市へのサゥダージ」は、6月20日から新宿シアター・トップスにて、7月2日まで。前売り3,000円、当日3,300円。問い合わせは0570-00-3337サンライズプロモーション東京まで。

キャノン パワーショット プロ 1

close
mail ishiguro kenji