第43回 悲惨さから立ち上がる姿 今岡昌子写真展「中国の緑と人びと」
4月25日号
来日した中国の温家宝首相は、文学の素養があるらしく、五七五の漢文の俳句、漢俳をひねって披露したという。
和風 化細雨
桜花吐艶 迎朋友
冬去 春来早
俳句にすると、
  そよ風に
  花 友迎え
  冬さりぬ
となるそうだが、かなりの意訳といわざるを得ない。
 漢文字を見ると細かい雨も降っている。安倍首相を訪問した時も雨だった。このとき温首相は、「今日は雨ですが春の雨は土地を豊かにします」と言う意味のあいさつをし、安倍さんは「中国と日本はたくさんの問題を抱えていて・・・」と、事務的に官僚の作文の棒読み調で応えたという。われらが首相に文学的素養もセンスもないのは仕方ないが、貴方ならなんて応える? と問われると、とっさのことでもあり、えらく難しい。酒の席だったが、友人のひとりは、「この雨が石油だったら、両国の問題は一つ片づきますね」というのはどうかと提案した。「焼酎が降った方がいい」という半畳が入ったが、もう一つ「この雨が、中国の砂漠の緑化に役立てば幸です」。これもシリアス過ぎて却下であろう。
JICA(独立行政法人 国際協力機構)は、中国に対し2005年実績で52億円を支出している。すべてを緑化事業に使っているわけではないが、砂漠化防止、洪水対策などの技術協力を行っている。ちなみに(JICAの2006年度の支出は1644億円であった)。
その支援のレポートでもある写真展が、東京都庁の展望室で開かれている。今岡昌子さんは、昨年7月に2週間現地へ、2004年には新彊ウイグルに3ヶ月滞在して取材をしたという。
 今岡さんは、大手メーカーの研究所で医薬品の開発の仕事をしていたころ写真学校で学び、1999年に退社、初めての取材でトルコとコソボへ出かけた。いきなりの紛争地帯の取材だった。
「ドキュメントの写真は、悲惨な現実をむき出しで見せるものが主流でしたが、彼女の写真は、その現実から立ち上がろうとする人を映し出しています」と、今岡さんを知る早川純敏さん(オリンパスイメージング(株)開発企画部)は語る。そんな仕事に対し、2003年には相模原写真新人賞を受賞、今年も大きな賞にノミネートされている。
遙か中国まで見渡すかのような都庁の展望室で、アジアの未来や地球温暖化について考えるチャンスかも知れない。
 (追記・昨年8月25日号で紹介した水中写真の中村征夫さんは、本年度の土門拳賞を受賞されました。)

写真 写真展と今岡昌子さん。東京都庁第1本庁舎45階の南展望室の特設会場で。4月24日まで。9時半から17時まで。入場無料。4月28日からはJICA横浜のギャラリーで。そのあと、石川・金沢展、北海道・帯広展など開催予定。
オリンパスEー500 ズイコーデジタル24−54ミリ

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