第38回 驚きのインド-1  新時代のヤングマハラジャ
2月10日号
インドといえば、僕たちのイメージにあるのは、まずバナラシ(ベナリス)のガンガ河で沐浴するヒンズー教徒の情景だ。さらに路上を占拠する聖なる牛。悲惨な路上生活者たち。そして、タージマハールの壮麗な建築物・・・などであろう。
また、インドに関して僕たちが持っている知識の最初に、世界中の人間の6人に1人がインド人という11億の圧倒的な人口。そのほとんどがヒンズー教徒で、過酷なカースト制度がいまも存在していること。
カレーとナン、タンドリーチキン。そして得体の知れないマハラジャ。これだけでもう充分神秘的な驚きの世界だが・・・。
 普通の旅行者にはお目にかかれない謎のマハラジャを撮った写真展が開かれると聞き、神田小川町のオリンパスギャラリーにカメラマンの本多元さんを訪ねた。
 そこに並んでいるのは、いままでのインドのイメージを完全にくつがえした写真だった。バナラシもスラムも写っていない。端正で都会的なビジネスと、伝統的セレブの華麗な生活が、いきいきと描かれている。間で喧噪の街の写真が、若いマハラジャの優雅さを際だたせている。 本多さんによると、「父が以前仕事でお付き合いのあったカラトガラ家に招待されて」特別に撮影の機会を得たという。「カトガラ家は、インドでは少数のパールシー族です。パールシーはイランの意味で、11世紀ころにイランから移住してきたゾロアスター(拝火教)の教徒です。インドでは富裕層が多く、インド2大財閥の1つターターもパールシーです。カトガラ家は、100年以上の歴史をもつ、インド最大のロジスティックス(国際物流)と旅行会社を経営する1族です」
パールシー族は、本来のマハラジャとはいえないかも知れないが、新しい時代の若いマハラジャとして君臨している。
 「世界中に点在しているカトガラ家の親族は、代々家訓で、月に1度は必ず家族会議(経営会議)のため集まるそうです」
 会社のパンフレットには、事業内容や実績の紹介のあと、いきなり堂々と子供の写真が出てくる。次代の経営の後継者として、長兄の長男、10才のナリ君のデビューである。
 BRICsで話題のインドだが、躍進めざましいIT関係のビジネスの陰で、伝統的な事業が確実に発展している。
 写真展「ヤングマハラジャ」は、残念ながらこの記事が出るころには終わってしまうのだが、1部を世田谷のレストラン「シェラパン」(tel03-5477-8567)で展示するという。(2月14日から)。興味のある方はぜひお問い合わせを。

写真上 インド最大のロジェスティック(国際物流)コングロマリット、カトガラ家の総帥・サイラスさんの写真の前で。写真展「ヤングマハラジャ」の本多元カメラマン(オリンパス・ギャラリーにて)。
写真下 会社のパンフレットには、カトガラ家の会社の後継者として、すでに長兄の長男ナリ君(10才)が、紹介されている。
オリンパスEー330 ズイコーデジタル24‐54ミリ

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