第24回 みんなで死海に浮かぼう 大相撲国際化にむけて
7月10日号
 佐渡が嶽部屋の力士13人(総勢30人)がイスラエルを訪問、のニュースを聞いたとき、思わず口をついて出たのは「えらい!」だった。イスラエル政府観光局の招待とはいえ、とにかく行く気になったのは偉い。それを拒否しなかった協会も偉い!  ・・というのは、かって講師を務めていた写真学校で、年に1度海外撮影旅行の授業があったが、「どこが良いか」の相談にいつもいち押しで奨めていたのがイスラエルだった。が、学校側から必ず拒否されていた。もちろん理由はいま地球でもっとも危険な場所だから、である。
仕事柄、割り合い世界のあちこちを旅してきたので、「どこが1番良かったか」と聞かれることが多い。それほど詳しいわけでもなく、いずれも仕事中心のあわただしい旅ばかりで答えるのもおこがましいが、「もう一度行きたい国はブラジル、行きたくなくても行かなければならない国はインドとイスラエル」と答えている。  特に学生たちにはイェルサレムとその周辺は、1度は行って欲しい地域である。民族と文化について、宗教について、歴史の積み重なりをこの目で直に見ることが出来る地球上に2つとない場所だ。
佐渡が嶽部屋の一行は、6月7日、地中海沿岸のカイサリアの古代ローマ時代の円形劇場で取り組みを披露。琴欧州がブルガリヤから駆けつけた両親の前で巴戦を制して優勝した。8日には死海で浮遊体験をして、無事戻ってきた。
 さて、大相撲名古屋場所が始まった。白鵬は綱取りに挑む。もし成功すれば9月にはモンゴル人が東西横綱を張って国技館の土俵を踏むことになる。
日本古来の相撲は単なるスポーツではない、五穀豊穣を祈る奉納芸として神武の時代から続いている国技だ。と言われているが、三百六十年ころ垂仁天皇の時代の七月七日から始まった説、起源は韓国のシルムで、元々国際的な格闘技であるという説もある。
しこ名も、元々、力士は生まれ育った土地を代表して戦ったから、ふるさとの山や海、川の名を名乗ったという。現役力士でも岩木山など呼び出しの声と共に青森の風景が浮かぶ。時代が変わって、しこ名も出尽くしたか、意味不明のものが多くなってきた。しかし外国勢は、しっかりとふるさとを背負っているようだ。朝青龍はいかにもモンゴルの蒼きオオカミを彷彿とさせる。時天空はどこまでも広いモンゴルの空と草原を描いて傑作に思える。琴欧州はヨーロッパを、把瑠都はバルト海に面したエストニアの都を代表しているようではないか。このままインド代表は軽勝多、フランス代表は勢縫川、ロシアからはすでに露鵬のほかに三段目に阿夢露がいる。アムール川の近くで生まれたのだろうか。イスラエルからは力持ちの矢古武案もあるが、グルジアの黒海と、サウジの紅海と、イスラエルの死海の巴戦など、見たいものだ。そして死海で仲良く浮かんで汗を流してほしい。
今日のニュースもガザでの激しい殺し合いを伝えているが・・・。

写真 死海は海抜マイナス400メートルの世界最低位置の塩分25%の湖である。琵琶湖の約1.4倍。向こう岸はヨルダンである。モデルはホテルの売店のお嬢さんとその恋人にお願いした。
ミノルタα9xi AF ZOOM 28-135mm エクタクローム

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