第13回   豊かな世(ユ)を招く 節祭(シチ)
1月10日号
毎年旧暦8,9月の己亥(つちのとい)に(2005年は11月11日)、西表の祖納と干立の2つの村ではシチを行う。
 第1日目は、各家で家族一人一人が産井(ウブガー)の水で心身を清め、干立では中柱に蔓草を巻き付け、海の小石で屋敷内を祓い清める。世(ユ)を招き入れ、新しい年を迎える準備である。また、朝早くから子供と高齢者除き、全員が公民館に集まり、準備にかかる。男たちは舟を出し、女たちは料理を仕込む。すでに10日まえから儀式の次第と奉納芸の練習を行ってきた。
 2日目、かのえ子の日。司たちのウガンヘの礼拝から始まるユークイである。
 早朝、村中にドラが鳴り渡る。村人は公民館に集まり、男たちはそれぞれの衣装に身を固め、女たちは髪を結い上げる。2度目のドラで旗頭を立て、行列が出来あがる。
 浜は、海のかなた、ニライカナイの祖神に奉納する儀式と芸能の舞台である。すでになぎさ近くにはユークイ舟が飾ってある。ドラ打ち、舟子と舟頭に続き行列が入場する。9品の料理を盛るスズリブタ持ち、飾りビン持ち、五穀持ち、ミリク神、ミリクの伴、大穀打ち。祖納ではフダミチを先頭にしたアンガマ行列。
 満潮が近ずくころ、男たちが舟を出す。2班に分かれて競争する形式をとっているが、ニライカナイからのユを、男たちが力の限り舟を漕ぎ寄せ、女たちが熱烈に迎えるのだ。
世(ユ)は穀物のことであり、豊かさのことだという。ユをもたらすニライカナイは、「根の国、黄泉の国を意味する幻想空間であり祖先神のいるところ、死者の行くところ」でもあるという。(外間守善氏)
奉納芸は、棒術、舟漕ぎ、櫂踊り、狂言、アンガマ踊りとつづく。干立ではホホホ神が出る。いずれも力強く美しい。演劇の源流といわれるだけあって、ひ弱なミュージカルなど、較べるまでもない。
3日目はウイヌカーの儀式。村の井戸を清掃し、お神酒を捧げ、3日間のシチを終えるのである。シチは、1991年に国の無形重要文化財に指定された。

明けましておめでとうございます。
皆さまも豊穣のユを迎えられますように。
今年もよろしくお願いします。

その後、山下さんからいろいろ情報をいただきました。
ウヌガーの水で身を清めることはやっていないとのこと。。昔のことか、現在は旧家でやっているのでしょうか。中柱に巻き付ける蔓草は、イリオモテシャミセンズル。屋敷にまく小石は実際は珊瑚の破片で、バラスというそうです。

写真上 シチ(節=新しい年)を迎える粗納の公民館。

写真下 ヤーフーヌティ(カイの奉納)を踊る山下智菜美さん。2003年より移住した山下さんは昨年は干立村の役員として活躍した。
山下さんのホームページ・イリオモテヤマオンナ日記は http://www.chinami.st/

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