第7回  風が吹くと桶屋が儲かる。ではハリケーンがが来ると・・・
10月10日号
 いきなりですが、クイズです。「風が吹くと桶屋が儲かると言いますが、ではハリケーンが来ると儲かるのは誰でしょうか?」
 答えの前に、あのカトリーナに襲われたニューオーリンズのことを少し。大河ミシシッピーの河口に近い人口約50万の都市。黒人約67%、白人約28%、残りもすべて有色人種。はっきりいって黒人の町である。フランス領ルイジアナの首都だったが、1803年にアメリカ合衆国に売却された。広いアメリカの中でも「一度は行ってみたいところN0.1」の観光地である。特に19世紀の町並みを残したフレンチクォーターは、ニューオーリンズの魂といわれる。デキシーランドジャズの発祥の地であり、「欲望という名の電車」の舞台であり、まだ少女だったブルック・シールズが娼婦を演じた映画「プリティ・ベイビー」を思い出される方も多いはず。ルイ・アームストロングのDo you know・・・のメロディ思い浮かべる方もあるだろう。また映画「イージーライダー」のデニス・ホッパーとピーター・フォンダが目指した終着の町だった。
 ニューオーリンズへ旅行された方は口々に「食べ物の不味いアメリカで、ここだけは別」と言われる。フランス系移民の植民地経営者たちのために発達したクレオール料理、カナダからの移住者を中心に食べられていた庶民的なケージャン料理。いずれもメキシコ湾の海の幸を使って大変美味しい。脱皮したばかりの「蟹のソフトシェル」や「オイスター・ロッカフェル」、独特の真っ青のドレッシングで食べる海藻サラダなどを思い出す。名物の四角いドーナツと濃いコーヒーもニューオーリンズによく似合った。
 しかしカトリーナがメキシコ湾を襲い、美味しい食材は壊滅的打撃を被った。  ニューオーリンズはスープ皿といわれる海抜マイナス地帯だから、堤防が決壊すれば水浸しになることは周知のことだったという。その惨状はテレビの映像で見たとおりだ。歴史の浅いアメリカで、ここは民族の原点、国宝みたいな場所だ。ぜひ元の姿を保存してほしい。
さて、問題はハリケーンの被害が湾岸の石油関連施設に及んだことだ。ただでさえ原油値上がりのまっただ中で一挙に70ドルを超えてしまった。
 この値上げ分の膨大なオイルマネーはどこへいったのか。最初はもちろん産油国へ。われわれの石油ショックは、向こうではオイルブームというらしい。アラブ首長国連邦(UAR)では最近まで砂漠だった土地に新しい町が出来、リゾート開発も盛んで、ドバイでは1泊1000ドル以上の豪華ホテルが続々建設中という。油のバブルである。
 サウジ・アラビアはあり余るオイルマネーでアメリカの国債や世界中の株を買う。おかげ様で日本でも小泉内閣初期の株価に戻った。それでも使い切れないお金で何を買うか。季刊「アラブ」によると、サウジは、超高価なアメリカの最新兵器を買っているという。 そこでクイズの答え。
 結局ハリケーンが来て儲けたのは、アメリカの軍需産業でした。
悔しいのは、石油高騰はどうやら仕組まれたマネーゲームだったらしいことだ。

ニューオーリンズのフレンチクォーターで。ファミリーバンドの路上演奏が始まった。
ライカ M4 ズミルックスF1.4 絞りf2 10分の1秒 エクタクローム
ディマージュ・スキャン・デュアル「でスキャニング

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