第5回  阪神ファンは帰らない
9月25日号
 どうにも歯切れが悪い。というのが、阪神星野SDの記者会見を見た、おおかたの感想である。
「よっぽど巨人へ行きたかったんやろ」
「にじみ出てるわ。行きたいなら行ったらええやん」
 大阪の人は率直かつ辛辣だ。
 今年プロ野球は改革元年だそうで、楽天やソフトバンクなど新しい名前が出てきたり、セ・パ交流試合は盛り上がったが、巨人戦に関してはテレビの視聴率が8月は最低4.6%、平均7.2%でついに崩壊した。これは巨人の問題と言うよりテレビ局の問題だ。首位争いのカードの裏で、巨人戦しか中継しない方がおかしい。貴重な7.2%の視聴者のうち、中継の合間に流れる10秒ほどの他球場の情報を知りたくてチャンネルを合わせている、いじらしいヤクルトファンや横浜ファンがいるのである。来年はどうにかしなければならないだろう。
監督を変えれば視聴率が上がるかどうか知らないが、こうなった原因は江藤、ローズ、清原、おまけに小久保まで4番バッターばかり買い占めた愚が表面化しただけの話し。と言うのは、古くから巨人ファンの大学教授S氏である。江藤などは、今期出番がなくてホームランを1本も打てずに、349号でストップしている。「かわいそうだよ。広島へ返すべきだ」
 というわけで星野問題だが、根っからのねつ造ではなく、どうやら接触があったらしい。「OBの広岡さんや一般の巨人ファンの猛反対で潰れた。シーズン中にあるまじき騒動になってしまって、星野さんも断念したのだろう」
 とS教授はほっとしている。阪神に優勝されたくやしさもにじんでいる。
 しかし、オフシーズンにドンデンはないのか?
「2年で10億やて。誰でも行きたいわな」
「ぼくなら1千万でもやったるで」
「あほ言わんといて。おまえさんの方から10億出したらやらせてくれるかも。・・・そんな球団、あるかも知れんなあ」
「それくらいの金で1年監督やりたい人はいっぱいいるで」
「そや、赤字解消や」
 浪速のプロ野球談義は騒々しい。ついでに、
「コミッショナーには小泉はんがええ。来年首相やめはるんやろ。民間へ来て、ほんまの改革やってみなはれ」だそうである。

阪神ファンは帰らない。選手も巨人ファンも去ってスタンドもグランドもすっかりカラになった球場で、いつまでも勝利に酔っていた。(9月15日東京ドームでの巨人阪神最終戦で)
オリンパスE-300 ズイコーデジタル7-14ミリ

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