第1回 判官贔屓
7月10日号
名古屋場所が開幕したというのに、土俵の外では若貴兄弟の確執の話題が続いてる。 TVでも雑誌でも醜い争いはやめろと言いながら、一方であおり立てて視聴率を稼いでいる。どうやら日本人は昔からこのような「骨肉の争い」が好きなようだ。
判官贔屓で国民的人気の「義経」も、兄頼朝との確執からくる悲劇なのだけれど、今年のNHKの大河ドラマでは、ただのカクシツとは違う、と描いて見せているようだ。
源氏一族の木曾義仲が都をめざしているころ、兄を慕って鎌倉で蟄居していた義経が呼び出される。そして情と理について二人の意見が交わされる。
頼朝は、「九郎は情に厚い。人の情は道理を覆い隠すやっかいなもの。判断を鈍らせる」という。
義経は、「情よりは理ですか?」と珍しく抗弁する。「人を動かすには情は必要と存じますが」
頼朝の答えは、 「情実で取り立ててはならぬ。主と従の契約あるのみ」だ。そして、「これまでと違う新しい流れを作るのだ」などと言う。 ドラマの作者は、頼朝は侍つまり官僚が支配する新しい国を目ざしたのだ、といいたかったようだ。 木曾義仲は、蛮声を上げて都へのぼっていく。その義仲の監視の役に、義経が命ぜらる。
いざ出陣である。
頼朝は、「木曾と平家が戦うときは、木曾への加勢は不要」と言い渡す。さらに、義経を近うと呼び寄せ、 「万が一の時は、同族といえども義仲へ情をかけるな」と冷たくささやく。 平家は西へ落ち、義仲は京を占領する。義経は悩んだ末に、結局は「義仲殿はこの手で征伐する」と決意するのだ。
ドラマは、理の頼朝にアメリカン・グローバリズムの旗を振る竹中大臣を重ねてみせたのでは? と勘ぐりすぎだろうか。
では義経は?
残念なことは、現代では義経役がなかなか見つからないことだ。 「理に働けば角が立つ。情に棹させば流される」と書いたのは確か文豪漱石だったが・・・。
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これからしばらく、時代と人間に焦点を合わせて考えてみようと思っています。が、ちょっとピンボケも手ブレもあるやも知れず・・・。どうぞご意見をお寄せください。
最近カメラファンの方が増えています。興味のある方のために撮影データをつけることにしました。

NHKスタジオパークの「義経」のコーナーで、牛若丸と弁慶の衣装を着て記念撮影している少女は、韓国からの観光客だった。
オリンパスE-1 ズイコーデジタル14-54ミリ
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