第17回 ルビコンを渡る豊里友行(3) 写真集 『沖縄戦の戦争遺品』
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・2021年 4月1日
「おはようございます。起きたら身体が、どーぶにぃやむるよーなっ感じがするよーな。母の病院付き添い。そろそろ『沖縄戦の戦争遺品』(新日本出版社)が、届く頃かな。」
・4月2日
「遺骨収集は、9年の取材と今の今までの戦争遺品の撮り卸しです。こーてぃきみそーれ(御購入ください)行商して歩きますね。物撮りは、ドシロですが、言葉と写真試行を仕掛けてあります。歴史の深淵な闇から帰るべき場所へ帰れずに埋もれた戦没者の尊厳を照射し浮き上がらせたい。かなり無謀な写真家の飛翔を試みました」
豊里は、すでに07年12月から国吉さんの遺骨収集に同行し、撮影してきた。今回の写真集には、60年あまり黙黙と収集を続けてきた国吉さんが遺骨とともに持ち帰った遺品の中から、懐中時計やめがね、万年筆、手りゅう弾など63点を収録した。(出版案内より)
豊里自身が認めるように、ブツ撮りはうまくない。照明も背景も十分とはいえない。が、豊里友行のブツは何かをぶつぶつつぶやいている。
そして、後半には国吉さんが登場して、捨てられた遺骨と豊里と3人で、沖縄のウムイを静かに黙黙と語りはじめるのだ。
収集の現場は、たどり着くまででも困難で、怖気づいて入れない洞窟もあった。掘り出してみたら、不発弾だったこともあった。暗くて撮影が出来ない洞窟も多かった。
遺骨や遺品のあのにおいは、「沖縄戦が繰り広げられた原野や洞窟、海辺の匂いがこびりついているのだと気づいた。」
国吉さんの遺骨収集は、「愚直なまでに誠実に死者と向き合うことだった。その姿は私たちになにを示しているのだろうか。」と豊里はつぶやく。「私は、沖縄戦や基地を写真に撮ろうとする時、心の底から鈍い痛みがこみ上げてくる。」
広島や長崎など、"戦争遺品"は、多くの巨匠が撮影し、発表してきた。懐中時計や万年筆、めがね、被爆した衣服などは共通アイテムである。克明な描写、巧みな照明、最新機材を駆使した高度の完成度。だが、清潔で匂いのしないそれらの多くは、知らずに見れば珍品のコレクションのカタログかと思われるものもあることに、筆者はいつも疑問と不満があった。
『沖縄戦の戦争遺品』は、国吉勇さんと遺品たちと沖縄と、つまり被写体との貴重な共著になり得た写真集だ、と言っていいと思う。
(つづく)
『沖縄戦の戦争遺品』
185mm x 165mm カラー(一部モノクロ)96ページ 新日本出版社刊 定価2400円+税
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