第14回 角川kousukeは氷の橋を渡る 写真集『HYPER JET'AIME』
|
 |
oooo
人間は全ての愛に飢えている。渇愛こそが人間そのものではないだろうか?
愛の正体が欲であり、そのまま人間のあるべき姿と肯定されたとき、カメラマンは、愛の先の何にカメラを向ければいいのか?
oooo
角川は、被写体と孤独な笑顔を交わす。氷の橋は時に陽の光を受けて、虹となって輝くだろう。
氷の橋を渡り、引き返し、また渡る。やめれば橋はなくなる。奇跡的に愛が温められれば氷の橋は融けてしまい、くら玄い孤独の底に落ちてしまうだろう。
「HYPER JET'AIME」は、十字架の半分が写り込んでいる少女の写真て終わる。少女の真っ直ぐないちずな視線は、カメラマンの胸を射抜く。が、角川がキリスト教的福音に何かを求めていないことは、もう少女が笑っていないことからも明確だ。
oooo
タイトルの「HYPER JET'AIME」は、「Hyper Je t'aime」ではない。ただの愛ではなく、ジェット噴射の愛らしいのだ。
角川は巻末にコメントを記す。(要略)
2019年3月17日早朝
「ハイパージュテーム」
なる言葉が降りてきた。
「ハイパーなアイラブユー」
というわけではない。
大いなる失意も過ちも、
振り返りさえしない
ハイパーな加速で
ジュテームの飛沫を
そこらじゅうに
浴びせかける。
(後略)
さらに、この写真集を2026年の自分におくる。と書く。真っ直ぐな言葉ほど危険なものはない。どうやら当分はジェット噴射の愛が飛び散るようだ。
『HYPER JET'AIME』は、角川kousukeの用意周到な企みかも知れぬ。
わずか36ページの写真集は2019年に刊行、このほど第2刷が発行された。新しい写真家の誕生である。
かくがわこうすけ
『HYPER JET'AIME』 ハイパー・ジュテーム
発行 LITTLE MAN BOOKS ¥800(税別)
|
|